研究実績の概要 |
今年度は、グリコシダーゼ阻害剤として研究例が比較的少ないポリヒドロキシピロリチジン骨格を有する誘導体の合成およびグリコシダーゼ阻害活性評価を行った。誘導体合成は天然物であるHyacinthacine骨格を参考に実施した。研究例が少ないことから、複数存在する水酸基の立体化学および絶対配置と阻害活性に関する知見がほとんど得られていない。そこで、これら水酸基の立体化学の制御および両対掌体の合成が可能となる柔軟なエナンチオダイバージェントストラテジーを用いて、合成研究を進めた。水酸基の立体化学および側鎖の異なる誘導体の両対掌体を含む合計8種類の誘導体合成を行い、各種グリコシダーゼに対する阻害活性評価を実施した。その結果、特定の誘導体においてエナンチオマー間でフコシダーゼに対する阻害活性が大きく異なる(一方のエナンチオマーは全く活性を示さない)興味深い結果が得られ学術論文1篇(Tetrahedron Lett. 2015, 56, 331-334)として報告した。さらにこの知見を発展させた検討を行った結果、新たにラムノシダーゼに対して強い阻害活性を有する化合物の創製につながり、同様に一方のエナンチオマーには全く阻害活性が認められなかった。現在、継続して本研究を推進している。
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