研究課題/領域番号 |
24590145
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
伊藤 喬 昭和大学, 薬学部, 教授 (40159885)
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研究分担者 |
金光 卓也 昭和大学, 薬学部, 講師 (10372913)
永田 和弘 昭和大学, 薬学部, 准教授 (20208010)
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キーワード | アルカロイド / 海洋天然物 / 全合成 / 抗糖尿病薬 / 抗血栓薬 |
研究概要 |
海洋天然物として単離されたSchulzeine類およびPenasulfateの全合成を行い、これらに関して報告されているαーグルコシダーゼ阻害作用を検証する。これらはキラル中心を有する複素環構造と、複数のキラル中心を持つ長鎖脂肪酸側鎖がアミド結合で縮合した特徴的な構造を有している。 我々は、まず各々の天然物を合成し、それらが報告されているような酵素阻害活性を有するか否かを、合成された純粋な化合物を用いて検証する。更に、グルコシダーゼ阻害作用以外の薬理活性についても、広範に検討する。 次に、各々の天然物に共通する骨格に着目し、複素環部分と長鎖脂肪酸部分を入れ替えたハイブリッド化合物を合成し、最も活性の高い基本骨格を同定する。酵素グルコシダーゼには、立体構造が明らかとなっているものが多数存在するので、ドッキング実験を行うことによって活性中心との相互作用を検証し、余分な骨格を持たない、活性なファーマコフォアを同定する。更に、このシミュレーションで得られた骨格を標的として合成を行い、高活性化合物の獲得を目指す。 また、微生物から得られたSMTP-7は、強力な抗血栓作用を有することが知られているが、これらを合成した例は知られていない。我々は、これを全合成すると共に、骨格が少しずつ異なる類縁体を合成し、最も活性の高い抗血栓薬の探索を目指して研究を行っている。現在、特徴的なジヒドロピラン骨格の合成を既に終え、側鎖部分の導入を行っている。これらの合成と生理活性の検証を平行して行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Penasulfateの全合成は完了し、天然物で報告されているスペクトルデータと、我々が合成した化合物のそれが一致することを既に確認した。また、酵素を用いたα-グルコシダーゼ阻害活性の検証でも、既存の糖尿病薬であるアカルボースと比較して遙かに高い活性を持つことを確認できた。 Schulzeineについては、一旦全合成の完成に近いところまで進んだが、その後天然物のキラル中心の同定に誤りがあったことが明らかとなり、合成計画の変更を余儀なくされた。2つのキラル中心を有する複素環骨格については、筆者らが開発した不斉アリル化による不斉合成に成功し、多量に調整する工程を確立できた。脂肪酸側鎖の合成については、これまで行ってきたWittig反応の再現性が低かったため、新たな合成経路を探索し、薗頭カップリングを用いた経路を開発した。長鎖側鎖に必要な官能基を導入した構造を既に合成しており、複素環骨格との縮合反応を残すのみである。 SMTP-7の全合成に関しては、試行錯誤を経ながら、分子内に2個存在するジヒドロピランを得ることができている。鎖状置換基の導入が今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
Penasulfate,Schulzeineともに全合成の完成は間近である。当初の計画通り、全合成を完成させる。その後、確立したアッセイ系を用いて、報告されているαーグルコシダーゼ阻害活性を確認する。 生理活性確認の後、ドッキング・シミュレーションによって、酵素活性部位と合成化合物の相互作用の様式を検討する。この理由は、我々が合成する化合物は、旧来のグルコシダーゼ阻害薬とは全く構造が異なるため、相互作用の様式に関しても異なることが想定されるためである。 これと平行して、各種のハイブリッド化合物を合成し、より阻害活性の高い化合物を検索する。ドッキングと合成を併用することにより、より高い活性を有する化合物の発見につなげたい。 SMTP-7の全合成については、側鎖導入の鍵反応を何とかクリアし、初のSMTP-7全合成を果たしたい.その後の活性測定は、本学薬理学教室が既にアッセイ系を確立しているので、薗手法に従い行う予定である。
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