研究課題/領域番号 |
24590147
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鈴木 英治 東邦大学, 薬学部, 准教授 (40187753)
|
研究分担者 |
石神 昭人 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 老化制御研究チーム 分子老化制御, 研究副部長 (50270658)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | アルツハイマー / アミロイドベータ / 凝集阻害剤 / 繊維化阻害 / ベンゾフラン / グルコサミン酸 / 多価フェノール / 有機合成 |
研究概要 |
神経細胞毒を示すAβ凝集体を特異的に認識するdistyrylbenzene (DSB) および2-arylbenzofuran (BF) に各種の親水性部分(水溶性アミノ酸、水溶性ペプチド、アミノスルホン酸誘導体、多価フェノール誘導体、アミノ基、ヘテロ環、カルボン酸)を導入した新規Aβ凝集阻害剤候補化合物の合成を行い、これら合成化合物についてのThioflavin Tによるアミロイドβの凝集および繊維化の阻害作用を測定した。その結果、水酸基4つを有する数種の誘導体に特に強いアミロイドβ凝集および繊維化阻害活性を見出した。さらにこれらの測定サンプルについては実際に電子顕微鏡で観察し、アミロイド繊維が形成されないことを確認できた。このThioflavin Tによる蛍光測定と実際の電子顕微鏡による観察の間で強い相関関係があることより、実際に繊維化を阻害している物質を見出していることが確認できた。さらにこの強い凝集阻害を示す化合物を用いて実際に繊維化したアミロイドβに添加したところ、その蛍光がなくなること、および実際に電子顕微鏡下でもアミロイド繊維が消失することを確認できた。このことから、本研究で得られる化合物は生成してしまったアミロイドβ凝集体を分解し、アルツハイマー病の根本的な治療薬につながる可能性が考えられる。 また、有機合成の研究では、今年度Fmoc固相合成法で使用できるグルコサミン酸の保護体の合成法に成功した。このことにより、通常のグリコシド結合による配糖体は生体内で容易に切断されてしまうことのない、グルコサミン酸とのアミド結合型の配糖体を作ることが可能になった。さらにこの保護体を用いてFmoc固相ペプチド合成機により、グルコサミン酸とのアミド結合型配糖体を短時間で多種類合成することが出来るようになった。今後この中からも強い活性を持つ化合物が見出されることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に平成24年度および平成25年度に計画していたdistyrylbenzene (DSB) および2-arylbenzofuran (2-BF) に、凝集阻害部位として多価フェノール誘導体を親水性部分として化学結合させた新規化合物を合成についてはほぼ終了し、それらの活性を測定し、比較することが出来た。その結果、非常に強い新規Aβ凝集および繊維化阻害活性をもつ2,5-ジフェニルベンゾフラン骨格に4つのフェノール水酸基を持つ複数の誘導体を見出すことに成功した。これらを用いて、本研究で得られるアミロイドβの凝集、繊維化阻害剤がアミロイドβ繊維に対し強い溶解活性を持つことが新たに見出された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、まず最も強い凝集・繊維化阻害作用を示した4つのフェノール水酸基を導入した2,5-ジフェニルベンゾフラン誘導体についてさらなる構造最適化を行う。具体的には水酸基の置換位置の異性体および2位および5位のフェニル基を除いた誘導体等を合成し、その活性評価より必須構造部分を特定する。 さらに新たな水溶性部位として各種多価アルコール誘導体、グルコサミン酸誘導体を持つ新規化合物の合成を行う。 これら新規化合物のアミロイドベータ凝集・繊維化阻害作用を測定し、候補化合物を選定する。 現在までで最も強い活性を示している4つのフェノール性水酸基を持つ化合物については実際に病態モデル動物への投与実験を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
引き続き消耗品として有機合成用の試薬を購入するために支出する。具体的には新規化合物を合成するために必要である各種フェニルボロン酸誘導体をはじめ、ベンゾフラン骨格の合成原料、また合成反応、精製過程に必須である各種有機溶媒の購入に使用する。なお、一部の合成原料(D-グルコサミン酸)については発注後に納品が大幅に遅れることになり、そのことに関連して一部未使用額が発生してしまった。次年度に納品、支払い予定である。
|