研究概要 |
COMTは自らの反応生成物であるS-アデノシルホモシステイン(SAH)によって強い阻害を受ける。酵素反応速度論による検討により、我々は化合物によるCOMTの賦活化は、COMTとSAH複合体の解離の促進によるものと推定した。 この仮説を証明するため、COMTとSAHの結合に対する化合物の影響を調べた。(1)平衡透析法:一枚の透析膜を隔てた二つのチェンバーからなるミクロ透析装置を利用した。SAH(4, 6, 8, 10, 12, 16, 20, 24 uM)を両側のチェンバーに加え、片側にはCOMT(21.6 uM)も加え、25°Cで6hrインキュベーションを行ったのち、両側から透析液を回収した。蛋白は変性させた後、それぞれのSAH濃度をHPLCで定量し、スキャチャードプロット解析から求めたCOMT-SAHの解離定数は0.77 uM (r2=0.98, n=0.60)であった。化合物120 uMが共存するとき、解離定数は1.14uM (r2=0.97, n=0.61)であり、結合力が30%ほど低下した。 (2) 等温熱量滴定法:COMT-SAH複合体の解離定数は、化合物なしでは1.0uM (n=0.63)であったが、存在下(120 uM)では1.67 uM (n=0.53)となった。実験条件:COMT35 uM溶液1.0mLを25°Cに保った測定セルに入れ、800 uMのSAH溶液を250秒ごとに4.9 uLずつ加えて滴定。 なお、nは酵素の理論量で最大結合量を除した値であり、酵素の実効濃度の規定度に相当するものである。ITC実験で用いたCOMTを非還元SDS-PAGEで分析したところ、多量体の形成、あるいはSS異性体(COMTにはCysが7つある)の混在が示唆された。H26年度は酵素の安定性を保持する条件を見いだし、再現性を含めて検討を行う。
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