研究課題/領域番号 |
24590150
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
浅田 真一 新潟薬科大学, 薬学部, 助教 (50424883)
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研究分担者 |
北川 幸己 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (60093853)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 転写因子 / NF-kB / 化学合成ペプチド / 転写調節因子 / ペプチドプローブ |
研究概要 |
本申請研究では、NF-κB転写活性化部位と結合する新規細胞核内因子の探索を行い、その相互作用の詳細な解析を行うことを目的としている。これまでに探索のためのプローブとなるペプチドの化学合成およびリコンビナントペプチドの設計および合成を次に示す2種の方法により行った。 1. ペプチドプローブおよびポリプロリンロッドの設計・化学合成 NF-κBp65のRNAポリメラーゼ複合体との相互作用部位には、相互作用時にα-へリックス構造を形成するφXXφφモチーフ(φは疎水性、Xは任意のアミノ酸)が2箇所(TA1,TA2)存在している。そこで、細胞核内因子探索のためのプローブとなるNF-κBp65転写活性化領域の上記2種類のペプチドおよびそれらの一部をAlaに置換することで二次構造を形成できないペプチドと、プローブを固相ビーズと結合する際の「スペーサー」となるポリプロリンロッドの5種類のペプチドの設計および化学合成を試みた。ポリプロリンロッドN末端にはビーズとの結合部位としてLys残基を、また、C末端にリガンドとの結合部位としてシステイン残基を導入したペプチドとした。プローブのN末端にシステイン残基を導入し、酸化条件下でポリプロリンロッドと結合することでアフィニティービーズとなるよう設計し、これら各ペプチドのFmoc-固相合成法の最適化を行った。現在、これら各ペプチドの大量合成・精製中である。 2. 大腸菌発現系によるリコンビナントペプチドプローブの作成 化学合成ペプチドプローブと同様の配列を持つ大腸菌リコンビナント発現系の設計を行い、これらペプチドを持つビーズの作成を試みた。NF-κBp65TA1(Ala置換体)を除く残り4種類の発現系を作成し、リコンビナントペプチドの調製を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の当初計画では、平成24年度中にプローブおよびポリプロリンロッドの化学合成を終了し、アフィニティービーズの作成を完了する予定であったが、ポリプロリンロッドの合成収率が低く、ビーズの作成に至っていない。ポリプロリンはPro残基が9つ連続して結合した配列を持っており、これらのアミノ酸縮合の効率が低く、合成が困難である。そこで、Fmoc-Pro-Pro-Pro-OHをbuilding blockとして合成を試みることとしたが、Fmoc-Pro-Pro-Pro-OHの液相合成に時間がかかったため、結果としてアフィニティービーズの合成に至らなかった。現在、このbuilding blockの合成を行うとともに、ポリプロリンロッドの合成を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
化学合成によるプローブの作成が遅れているため、計画調書の「本研究がうまく進まない時の工夫」に記載した大腸菌リコンビナントペプチドプローブの作成を開始している。当初の計画と比較し進行が遅れてはいるが、研究計画調書に記載した通りTA1およびTA2を探索プローブとした化学合成ペプチドおよび大腸菌リコンビナントペプチドの合成を行い、NF-κBp65と相互作用する分子の探索を行う予定である。また、相互作用分子探索において、NF-κBp65のTA領域との特異性のある分子を明確にするため、NF-κBp65のTA領域同様α-へリックス構造を介してRNAポリメラーゼ複合体と相互作用することが知られているESXやALL1、HSF-1などの転写因子の活性化領域も同様に化学合成および大腸菌によるリコンビナントペプチドの合成を行う予定である。これらプローブとの相互作用分子を比較することにより、よりNF-κBp65と特異的に結合する分子の探索が可能となる予定である。なお、これらのペプチドのアミノ酸縮合および脱保護・精製条件はすでに検討済みであり、今後これらの大量合成を行う予定である。また、大腸菌リコンビナントによるペプチド発現系についても、すでに半分は作成済みであり、残りの発現系の作成を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 化学合成ペプチドプローブの作成(平成24年度の続き):Fmoc-Pro-Pro-Pro-OH building blockの液相合成を継続し、ポリプロリンロッドの大量合成を行い、NF-κBp65TA1,TA2と結合した探索プローブ持つアフィニティービーズの作成を継続する。また、ESX、ALL1、HSF-1転写活性化領域のα-へリックス形成ペプチドも合成し、これらペプチドを結合した探索プローブを合成する。 2. 大腸菌リコンビナント発現系によるペプチドプローブの作成(平成24年度の続き):平成24年度に作成した発現系の各ペプチドを大腸菌で発現・精製を行い、アフィニティービーズとする。 3. ペプチドプローブと結合する細胞内分子の抽出・精製・同定:1および2で合成した各アフィニティービーズと細胞核抽出液を混合し、各ペプチドプローブと特異的に結合する分子を精製する。これら分子をSDS-PAGEにより分離後、MALDI-TOF-MSにて同定を行う。 4. 結合部位の詳細解析(構造活性相関):アミノ酸欠失ペプチドやアミノ酸置換体ペプチドを化学合成して構造活性相関を行い、NF-κBp65のTA1領域およびTA2領域と相互作用することが同定されたタンパク質との結合に必要なTA領域の長さおよび結合に必須のアミノ酸を絞り込む。
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