研究課題/領域番号 |
24590155
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
池田 潔 広島国際大学, 薬学部, 教授 (40168125)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シアル酸 / パラインフルエンザウイルス / シアリダーゼ阻害剤 |
研究概要 |
病原性ウィルスの一つであるヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)はかぜ症候群の原因ウィルスであり、乳幼児の初期感染において気管支炎や肺炎などの症状を引き起こすことが分かっている。hPIV-1シアリダーゼ阻害活性発現には、2,3-不飽和シアル酸誘導体の7,8,9位のグリセロール骨格が保存領域であり、シアル酸の4,5位置換基が阻害活性に大きな影響を与えることが知られている。現在、hPIV-1-ヘマグルチニンのX線結晶解析情報は得られていない。2004年、シアル酸の5位のアセチル基がイソブチロイル基で置換されたBCX-2798 および BCX-2855 が hPIV-1 および hPIV-3 HN糖蛋白質に対して強い抗ウィルス活性を持つことが報告された。申請者はすでにシアル酸誘導体の5位にトリフルオロアセトアミド基を導入した化合物がNH糖蛋白質に高い親和性をもつことを明らかにした。これまでの研究から見出された活性化合物4-O-エチル-(I)、4-O-チオカルボニルメチル-(II)、4-O-チオフェン- 2,3-ジデヒドロ-N-アセチルシアル酸誘導体(III)をリード化合物としながらN置換基をBCX型に変えたハイブリッド型の新規化合物の合成を行った。今回、シアル酸誘導体(I)をリード化合物として, さらに高い抗ウィルス活性が期待される5位のアセチル基をn-プロパノイル基およびイソブチロイルで置き換えたシアル酸誘導体(IV)の合成を行った。実験では、著者らが開発したN-Boc法(Tetrahedron Lett. 48, 7431-7435 (2007))により得られたシアル酸のN-Boc誘導体を鍵化合物として簡便に、目的物である4-O-エチル-2,3-ジデヒドロ-N-アシルシアル酸誘導を合成することができた。現在、合成された化合物 IVについて hPIV-1阻害活性を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 申請者は4-O-エチル-2,3-不飽和シアル酸誘導体をリード化合物として, さらにBCXタイプの高い抗ウィルス活性が期待される5位のアセチル基をn-プロパノイル基およびイソブチロイルで置き換えた4-O-エチル-2,3-ジデヒドロ-N-アシルシアル酸誘導の合成に成功した。合成された化合物のhPIV-1阻害活性を検討中である。今後、同様に4-O-チオカルボニルメチル-2,3-不飽和シアル酸誘導体をリード化合物とした化合物の合成と評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
同様に4-O-チオカルボニルメチル-2,3-不飽和シアル酸誘導体をリード化合物とした化合物の合成と評価を行う。すでに申請者はシアル酸のアセチレン誘導体とフェニルアジドとの付加反応からhPIV-1阻害活性をもったトリアゾール誘導体の合成に成功している。TGS法はターゲット蛋白と親和性をもつ二つのフラグメントがそれぞれ, 蛋白のバインデイングポケットに結合してテンプレート効果によって, 互いに化学的に結合して強い親和性をもつ化合物を創出する方法である。申請者はin situ click chemistryを用いたTGS法によりリード化合物の探索と最適化を目指し有望な化合物について大量合成を行い、臨床応用への可能性を検討する。さらに創薬プロセスに量子化学ベースの手法を取り入れることで、より効率的かつ精度良く化合物の最適化を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者はin situ click chemistryを用いたTGS法によりリード化合物の探索と最適化を目指し有望な化合物について大量合成を行い、臨床応用への可能性を検討する。さらに創薬プロセスに量子化学ベースの手法を取り入れることで、より効率的かつ精度良く化合物の最適化を目指している。次年度の研究費は、本研究を効率的に推進するために、主に比較的高価なシアル酸をはじめとした試薬類の購入にあてる予定である。
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