研究実績の概要 |
本研究は,次世代リアルベース in silico創薬による理論的分子設計と合成化学,さらに生物活性評価を組み合わせた効率的創薬プロセスにより,新規抗hPIV-1治療薬の創出とその臨床応用を目指している。申請者は最終年度にシアル酸のアセチレン誘導体とフェニルアジドとの付加反応からhPIV-1阻害活性をもったトリアゾール誘導体の合成に成功した。1.シアル酸の 4-O-チオカルバモイルアルキル基の炭素鎖長と hPIV-1 阻害活性との相関関係はアルキル基の炭素鎖長がメチル基 (IC50 = 10 μM)>エチル基 (IC50 = 68 μM)>プロピル基 (IC50 = 102 μM)の順であることを明らかにした。2. シアル酸の4位にアルキル基を導入した4-O-エチル体が強い阻害活性hPIV-1 阻害活性 (IC50 = 6.3 μM)を持つことを明らかにした。3. 薗頭反応を鍵反応としてシアル酸の4-O-プロパルギル基へ種々のヘテロアリール基の導入を行った結果, α-4-O-2-チエニルシアル酸誘導体がNeu5Ac2en 1に比べて250倍以上強い hPIV-1 阻害活性 (IC50 = 1.2 μM) を持つことを明らかにした。4. シアル酸誘導体にはじめてFerrier反応を適用して合成された 3,4-不飽和シアル酸誘導体6は将来出現が予想される新規パンデミックウイルスやその耐性菌に対する有効な薬剤の候補として期待されている。5.シアル酸にMCR法を適用して多彩な置換基をもつ化合物7や8の合成に成功した。本研究は次世代リアルベース in silico創薬法による理論的分子設計と合成化学,さらに活性評価を組み合わせた創薬研究であり, ハイリスク患者などの社会的弱者に対する多重感染症を予防するためのオーファンドラッグの創製として学術的に意義深く社会的な要請に応えるものである。
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