研究課題/領域番号 |
24590156
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石井 英樹 独立行政法人理化学研究所, 分子イメージング創薬化学研究チーム, 副チームリーダー (80425610)
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研究分担者 |
古山 浩子 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50402160)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天然物 / PET / プローブ / ギンコライド |
研究概要 |
イチョウ葉エキスは,記憶力の減退や抗鬱などの治療に有効で、世界55カ国で医薬品として扱われているが、我が国では有効成分が立証できていないため健康食品として販売されている。ギンゴライド類はイチョウ葉エキスの主要含有成分であり、水酸基の置換位置および数が異なるギンゴライドA、 B、 C、 J、 M(GA、 GB、GC、GJ、GM)が知られている。GBおよびGCはグリシンおよびGABA受容体のアンタゴニストで、GBはさらに血小板活性化因子受容体(PAFR)に強く結合し血小板凝集阻害作用を示すことが知られている。 最近ラットPITモデルを用いたin vivo評価においてGBは脳梗塞の進行を顕著に抑えることが判った。しかし、GBを短寿命放射性核種18Fでラベル化したPETプローブをラットの尾静脈へ投与したがGBの脳内移行性はほとんど観測されずギンゴライドの脳機能改善作用と体内動態との間のディレンマに陥った。一方10位水酸基をエーテル構造に変換すると、PAFRに対する結合活性が10倍増強されるが、このGB誘導体の脳梗塞の進行抑制効果は示されなかった。最近、新たにギンゴライドの脳神経細胞保護作用機構としてMg2+が介在するグルタミン酸誘導によりCa2+流入および神経細胞死が抑制されることが示された。 一般的に脳を標的とした場合には血液と脳との間を隔てる血液脳関門(BBB)の透過性が問題になる。BBBには脳のエネルギー源となるグルコースや必須アミノ酸などの輸送系や神経伝達物質代謝物の排出系のほか生体内異物や内在性物質を排出するP糖タンパク質などの多様な輸送および排出ポンプが存在する。本研究では脳内移行性基質としてとしてD-グルコースをGBに修飾したプロドラッグの手法を取り入れることにした。 そこで本年度はギンゴライドのグルコースプロドラッグの創製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロドラッグの連結結合(リンカー)の加水分解による薬剤の再生のされやすさを考慮して,グルコース1位のヘミアセタール水酸基,6位の一級水酸基を利用して薬剤を結合することにした。また,グルコース3位水酸基に薬剤を導入しても糖代謝が阻害されないと予想されることから,3位水酸基も候補に挙げた。ここで目的とするグルコース部位の脳内移行性機能の評価のために、グルコース分子内にある水酸基の一つを薬剤にみたてたp-メチルベンジル基で代謝的に安定なエーテル結合により修飾した化合物をグルコースプロドラッグモデルとした。グルコースの1位,6位,および3位水酸基へのp-メチルベンジル置換体(コールド体)は以下の方法により合成を試みた。 1位置換体(1-O-BnGlc)の合成:グルコースのペンタアセテート保護体からソフトルイス酸を触媒にしてp-メチルベンジルアルコールを導入し,脱保護反応で処理して1-O-BnGlcが合成できた。6位置換体(6-O-BnGlc)の合成:グルコースの4および6位水酸基をp-メチルベンジリデン3位置換体(3-O-BnGlc)の合成できた。:1,2:5,6-D-O-イソプロピリデン-α-D-グルコフラノースを出発原料にしてp-メチルベンジルアルコキシドを作用させ,脱保護反応により処理して3-O-BnGlcが合成中である。 現在計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、グルコース誘導体をすべて合成した後、11Cラベル化用前駆体を行う。前駆体の構造としてはp-メチルベンジルアルコールの代わりにp-ブロモベンジルアルコールを用いて同様な方法で各臭素化体を合成し、Pd(0)錯体を用いてトリブチルスズ基あるいはピナコールボロン基に置換して合成する予定である。 前駆体が合成できたら、グルコース水酸基の保護および脱保護を組み合わせた高速C-メチル化法による11Cラベル化と脳内移行性の評価を行い、前駆体を用いて高速C-メチル化反応および脱保護反応を組み合わせた標識合成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は必要な試薬および器具の購入と、得られた成果の発表のための資料作成費および旅費として研究費を使用する予定である。 本年度未使用額が生じたのは、研究が順調に進行したため最小限の消耗品の購入で研究を遂行できたためである。次年度は繰越金をPETの研究および研究成果の国際学会等での発表に使用する予定である。
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