古来より、イチョウ葉には夜尿症や去痰、鎮咳などの効果があることが知られていたが、近年はこれらの効能に加え、脳梗塞や心筋梗塞への効能、アルツハイマーや痴呆などへの効能なども注目されるようになってきた。これらイチョウ葉エキスの効能はその主要成分であるフラボノイド類だけでは説明できず、その主要活性成分はイチョウ葉からしか単離されていないギンコライド類に起因するのではないかと言われている。実際、多くの活性試験の研究結果が、この考えを支持しているが、いずれの研究からも確証は得られていない。その原因の一つはギンコライド類の脂溶性が非常に低いため、細胞への取り込みが悪く、in vivoではそれほど高い活性がえられていないため、劇的な治療効果が発揮されず、その評価が二分してるのが現状である。そのためイチョウ葉エキスは海外では医薬品として扱われている国もあるが日本では栄養補助的な物として販売されている。 本研究では特にギンコライド類の脳神経細胞保護作用に着目し、より効果的にこの作用を引き出すため、グルコーストランスポーターを利用したギンコライド類のプロドラックの創製を目指したものである。具体的にはギンコライドにグルコースを適当なリンカーを介して結合させることで脳への取り込みが促進されることを期待し分子設計を行った。さらにグルコースリンカーを付与したギンコライドが生体内でどのような動態を示すかについてはさせ、短寿命放射性核種(炭素11:半減期約20分)で標識した炭素11ギンコライド誘導体(PETプローブ)を合成し、小動物へ投与しその動態を観測し評価することを計画した。
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