研究課題
中国で排出された大気中の有機汚染物質が日本海を越えて日本に長距離輸送されている可能性が示唆されているものの、汚染物質は様々な燃焼発生源に由来し、地元発生源の寄与も無視できないことから、その程度を含め結論に至っていない。冬季から春季にかけて中国において大気汚染の主要な発生源となっている石炭燃焼煙に特異性が高く、大陸からの長距離輸送を明確にでき、また黄砂による大気汚染物質の輸送をも評価できると推定される石炭燃焼マーカーとして含硫黄多環芳香族化合物 (PASH)を提案し、燃焼発生源からの発生量及び大気中濃度、さらに尿中代謝物を生体指標(バイオマーカー)とする石炭燃焼煙の人体曝露評価法を開発することを目的とする。平成26年度は、石炭燃焼煙に対する特異性と大気中濃度が高いPASHの1つであるジベンゾチオフェン(DBT)をSDラットに腹腔内投与して尿中代謝物を前年度に続き同定したところ、DBTのスルホキシド、水酸化DBT及び水酸化DBTスルホキシドを主要な代謝物として同定することに成功し、ヒト尿中から検出する代謝物の最終的な候補化合物として決定した。代謝物の中でも、水酸化DBTスルホキシドの尿中排泄量はDBTスルホキシド及び水酸化DBTのおよそ10倍であり、DBTの主代謝物であることが推察されたが、バイオマーカーは対象化合物が試料中により高濃度に存在することが望ましく、還元処理を行った尿中水酸化DBTと水酸化DBTスルホキシドの総量としての水酸化DBTが最適な石炭燃焼煙曝露バイオマーカーとなり得ると考えられた。大気中DBT濃度と本代謝実験より得られた尿中への排泄量を考慮すると、ヒト尿試料における還元後の水酸化DBT濃度は数pMレベルと推定され、分析可能であることから、ヒト尿試料を還元して得られる水酸化DBTが石炭燃焼煙曝露のバイオマーカー候補として最も有力であると結論づけた。
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