研究課題/領域番号 |
24590161
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高宗 暢暁 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (60322749)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HIV |
研究概要 |
本研究の目的は薬剤耐性HIV出現を回避し既存の抗HIV薬と作用機序が異なる新しい抗HIV戦略を構築するため、以下に記述した点に力点を置いた基礎研究を行うことである。研究代表者はHIVの弱点と考えるHIV複製に必須で保存されたウイルスタンパク質の翻訳後修飾を阻害することを目指している。研究の柱の一つとして、新規HIV複製阻害法構築のためにHIV複製に密接に関わる翻訳後修飾酵素のひとつNMT1に着目した。特にNMT1リボゾーム局在の特徴に注目し、その詳細を明らかにすることを中心に検討をすすめている。また、第二の研究の柱として、多クローンのNefにおけるリン酸化の多様性解析及びリン酸化部位の同定を試みている。NefはHIVの病原性因子である。Nefのリン酸化の程度がその機能と密接に関連しているのではないかという仮説のもと、研究を遂行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エイズの原因ウイルスであるhuman immunodeficiency virus (HIV)は、患者の体内で免疫攻撃や抗HIV薬の圧力に対し、多様性によって対抗する。HIVの多様性は、自身の逆転写酵素が校正機能を有さないことに加え、HIVの複製速度が著しく速いことが主な原因となり、HIVゲノムへの変異導入と蓄積が繰り返される結果である。薬剤耐性HIV出現を遅延・回避する新しい抗HIV戦略の構築は急務である。そのような背景のもと、本研究では「薬剤耐性HIV出現を回避する抗HIV戦略の構築」を究極の目的としている。 新規HIV複製阻害法構築のためのNMT1に着目した解析おいて、native PAGEによりNMT1が高分子量で検出され、単体ではなく複合体として存在していることが示された。鋭意相互作用分子の解析を行っている。Nefにおけるリン酸化解析では、2次元電気泳動(2D-PAGE)により等電点約0.1のシフトと、アルカリフォスファターゼ(AP)処理による脱リン酸化体検出で行った。またあわせてPhos-Tagを含むSDS-PAGEを利用し、リン酸化数の特定を行っている。Nefのリン酸化には多様性が存在していることが示されており、この特徴について詳細を解析中である。すでに2カ所のリン酸部位を特定しつつある。着実に進歩しており、今後の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
NMT1はNefと結合することが報告されている。本研究で見いだされているNMT1の複合体にNefがどのように関連してくるかという観点を加え、これまでの研究を継続していく。 NMT1と複合体を形成する相手方の分子の特定を共免疫沈降と質量分析を利用して行う。その複合体形成に必要となる領域の特定を行う。さらに、この複合体形成がNMT1のリボゾーム局在とどのように関わっているのかという観点を含めて検討していく。 Nefのリン酸化については、保有しているNefクローンについてリン酸化数の同定と、リン酸化サイトの同定をPhos-tag SDS-PAGE、二次元電気泳動、質量分析装置を利用し進めていく。Nefのリン酸化がNefの機能とどのように関わるのかを検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策で述べたように、NMT複合体の構成タンパク質を同定するため、電気泳動関連試薬、質量分析関連試薬、培養に必要な試薬や器具類などに研究費を使用していく。Nefのリン酸化に関する研究でも電気泳動関連試薬、Phos-tag関連試薬、質量分析関連試薬が必要になるので、これら試薬の購入に充てる。またタンパク質精製に必要な各種抗体やキット類の購入のために使用する。 また、関連の学会に参加し必要な情報を収集する必要があるので、学会参加のための旅費に使用する。
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