研究課題/領域番号 |
24590161
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高宗 暢暁 熊本大学, イノベーション推進機構, 准教授 (60322749)
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キーワード | HIV |
研究概要 |
本研究の目的は薬剤耐性HIV出現を回避し既存の抗HIV薬と作用機序が異なる新しい抗HIV戦略を構築するため、以下に記述した点に力点を置いた基礎研究を行うことである。研究代表者はHIVの弱点と考えるHIV複製に必須で保存されたウイルスタンパク質の翻訳後修飾を阻害することを目指している。翻訳後修飾のひとつミリストイル化はそのタンパク質の機能発現に必須であるが、HIVにおいて構造タンパク質Gagやアクセサリータンパク質Nefがミリストイル化を受け、これらの翻訳後修飾を受けない変異体はウイルス複製能力が消失もしくは著しい低下を引き起こすことが明らかになっている。このミリストイル化を触媒する酵素は宿主性のNミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)である。NMTにはNMT1とNMT2の2種のアイソフォームが存在するが、研究の柱の一つとして、新規HIV複製阻害法構築のためにHIV複製に密接に関わるNMT1に着目した。特にNMT1リボゾーム局在の特徴に注目し、その詳細を明らかにすることを中心に検討をすすめている。また、第二の研究の柱として、多クローンのNefにおけるリン酸化の多様性解析及びリン酸化部位の同定を試みている。NefはHIVの病原性因子であり、多様なタンパク質と相互作用し、CD4やMHCクラスIのダウンレギュレーションを誘導しウイルス複製を促進することが知られており、その欠損ウイルスは著しくウイルスの複製能力が低下することが知られている。Nefのリン酸化の程度がそのHIVの病原性にかかわる機能と密接に関連しているのではないかという仮説のもと、研究を遂行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エイズの原因ウイルスであるhuman immunodeficiency virus (HIV)は、患者の体内で免疫攻撃や抗HIV薬の圧力に対し、多様性によって対抗する。HIVの多様性は、自身の逆転写酵素が校正機能を有さないことに加え、HIVの複製速度が著しく速いことが主な原因となり、HIVゲノムへの変異導入と蓄積が繰り返される結果である。薬剤耐性HIV出現を遅延・回避する新しい抗HIV戦略の構築は急務である。そのような背景のもと、本研究では「薬剤耐性HIV出現を回避する抗HIV戦略の構築」を究極の目的としている。 新規HIV複製阻害法構築のためのNMT1に着目した解析おいて、native PAGEによりNMT1が高分子量で検出され、単体ではなく複合体として存在していることが示された。相互作用分子の解析を行った結果、RNAの輸送やスプライシングに関与するタンパク質が相互作用していることが明らかになった。この相互作用がHIV複製にどのように関与しているのかという観点で現在解析を進めている。 Nefにおけるリン酸化解析では、2次元電気泳動(2D-PAGE)により等電点約0.1のシフトと、アルカリフォスファターゼ(AP)処理による脱リン酸化体検出で行った。またあわせてPhos-Tagを含むSDS-PAGEを利用し、リン酸化数の特定を行っている。Nefのリン酸化には多様性が存在していることが示されており、この特徴について詳細を解析中である。また質量分析装置を利用し、リン酸化部位の同定も試みている。着実に進歩しており、今後の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
NMT1はNefと結合することが報告されている。本研究で見いだされているNMT1の複合体にNefがどのように関連してくるかという観点を加え、これまでの研究を継続していく。 NMT1と複合体を形成する相手方の分子の1つを特定したが、その結合のHIV複製における意義を明らかにしていく。さらに、この複合体形成がNMT1のリボゾーム局在とどのように関わっているのか、HIVのgagタンパク質のミリストイル化にかかっているのか等の観点を含めて検討していく。 Nefのリン酸化については、保有しているNefクローンについてリン酸化数の同定と、リン酸化サイトの同定をPhos-tag SDS-PAGE、二次元電気泳動、質量分析装置を利用し進めていく。Nefのリン酸化がNefの機能とどのように関わるのかを検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には研究計画に沿って予算を執行してきた。より合理的に研究を進めた結果である。 この次年度使用額は計画している試薬の購入にあてる。
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