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2012 年度 実施状況報告書

機能性有機金属化合物・錯体分子によるメタロチオネインの機能調節とその分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 24590163
研究種目

基盤研究(C)

研究機関愛知学院大学

研究代表者

藤原 泰之  愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (40247482)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード薬学 / 有機金属化合物 / 錯体分子 / メタロチオネイン / 生体防御因子
研究概要

本研究は、無機化合物と有機化合物の両方の特性を有する有機金属化合物・錯体分子(ハイブリッド分子)に着目し、(1)各種培養細胞において生体防御因子の一つであるメタロチオネインを効率よく誘導合成する化合物を見いだす、(2)次いで、メタロチオネイン誘導合成能を有するハイブリッド分子をツールとして活用し、新たなメタロチオネイン誘導合成機序の解明を目指す、(3)また、実験動物を用い、個体レベルでのハイブリッド分子の有用性を確認し、動脈硬化症などの各種疾患の予防と治療に貢献できる有用なハイブリッド分子を提案することを目的としている。
平成24年度は、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞などの血管構成細胞のメタロチオネイン合成を効率よく誘導するハイブリッド分子の探索を行うことを目的とした。まず、血管内皮細胞に対して効率よくメタロチオネインを誘導合成する低毒性な化合物を見いだすことを目的に、ハイブリッド分子ライブラリーを用いて化合物の探索研究を行い、120化合物の中から高メタロチオネイン誘導能を有する化合物としてジエチルジチオカルバミン酸銅[Cu(II)(Edtc)2]を見いだした。Cu(II)(Edtc)2は血管壁細胞に対してもメタロチオネイン合成を誘導したが、その程度は血管内皮細胞に比べて弱かった。Cu(II)(Edtc)2が高メタロチオネイン誘導能を示す処理条件下において、Cu(II)(Edtc)2の配位子あるいは硫酸銅の単独処理ではメタロチオネインの発現誘導は起こらず、銅を他の金属に置換した化合物や配位子を置換した化合物では誘導効果の消失あるいは低下が認められた。しかもCu(II)(Edtc)2は細胞内へ取り込まれやすい特徴を有することも確認された。また、Cu(II)(Edtc)2で前処理した細胞では、カドミウムや亜ヒ酸による細胞毒性が軽減されることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度(平成24年度)の研究実施計画では、ヒト冠動脈血管内皮細胞、ヒト脳毛細血管内皮細胞、ヒト冠動脈血管平滑筋細胞およびヒト脳毛細血管周皮細胞を用いて、これらの血管構成細胞を各種ハイブリッド分子で処理し、細胞内メタロチオネインmRNA並びにタンパク質量の測定、ハイブリッド分子の構造活性相関の検討、および細胞毒性の評価などの分析を行い、メタロチオネイン合成を効率よく誘導する低毒性なハイブリッド分子を探索することを目的とした。
各種検討の結果、平成24度は、まず、120種類のハイブリッド分子の中から、高メタロチオネイン誘導能を有する低毒性な化合物としてジエチルジチオカルバミン酸銅[Cu(II)(Edtc)2]を見いだすことに成功した。このCu(II)(Edtc)2は血管壁細胞に対してもメタロチオネイン合成を誘導すること、並びにその程度は血管内皮細胞に比べて弱いことを見いだした。また、Cu(II)(Edtc)2が高メタロチオネイン誘導能を示す処理条件下において、Cu(II)(Edtc)2の配位子あるいは硫酸銅の単独処理ではメタロチオネインの発現誘導は起こらず、銅を他の金属に置換した化合物や配位子を置換した化合物では誘導効果の消失あるいは低下が認められることを明らかにした。しかもCu(II)(Edtc)2は細胞内へ取り込まれやすい特徴を有することも確認した。したがって、平成24年の研究実施計画にそって研究を行い、上記のように十分な結果が得られたことから、現在までの達成度として、おおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

現在のところ研究計画にそっておおむね順調に進展しているので、基本的には平成25年度以降も当初の研究実施計画に基づき、粛々と研究を遂行していく予定である。
平成25年度の研究実施計画としては、血管構成細胞以外の各種培養細胞(ヒト肝細胞、ヒト小腸上皮細胞、マウス大脳皮質神経細胞、ラット大脳皮質神経細胞およびアストロサイト、ヒトおよびラット腎近位尿細管上皮細胞など)を用いて、メタロチオネイン合成に対するハイブリッド分子の作用を検討し、ハイブリッド分子の細胞選択性に関する情報を得ることを目的とする。なお、初年度の探索研究で、120のハイブリッド化合物の中から有用な化合物の一つとして、Cu(II)(Edtc)2を見いだした。今後、Cu(II)(Edtc)2を基にした新規の関連化合物を連携研究者の協力により創製し、それらの化合物の活性を調査することを通じて、Cu(II)(Edtc)2よりもさらに有用な活性を有する化合物を探索する。あわせて、これまでに未検討のハイブリッド分子を用いて、前年度と同様に探索研究を行い、新たなリード化合物を探索することも並行して行う。また、有用な化合物については,作用発現メカニズムを検討する。これらの検討により得られた情報は化学系の連携研究者にフィードバックし、情報を共有しながらさらに有用な化合物の創製を試みる。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の残高として39,354円が発生した。これは、年度末(3月末)に購入を予定していた試薬の購入を延期したためである。本試薬は購入後比較的速やかに活性が低下するものであり、研究に使用する直前に購入する必要がある。平成24年度内にその試薬を用いた実験を行うことができなかったので、平成25年度にその試薬を用いる検討を行う際に購入する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] メタロチオネイン高発現誘導機能を有する有機金属化合物・錯体分子の探索2012

    • 著者名/発表者名
      藤原泰之,李 辰竜,佐藤雅彦
    • 学会等名
      第3回メタロミクス研究フォーラム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120830-20120831
  • [学会発表] カドミウム長期曝露マウスの腎臓におけるp53の過剰蓄積とその局在性2012

    • 著者名/発表者名
      李 辰竜,徳本真紀,岩田紘司朗,藤原泰之,佐藤雅彦
    • 学会等名
      第3回メタロミクス研究フォーラム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120830-20120831
  • [学会発表] 血管内皮細胞における有機金属化合物・錯体分子によるメタロチオネイン発現誘導

    • 著者名/発表者名
      藤原泰之,李 辰竜,佐藤雅彦
    • 学会等名
      第58回日本薬学会東海支部総会・大会
    • 発表場所
      静岡
  • [学会発表] ジエチルジチオカルバミン酸銅によるメタロチオネインの高発現誘導

    • 著者名/発表者名
      藤原泰之,黒田亮顕,李 辰竜,佐藤雅彦
    • 学会等名
      日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2012
    • 発表場所
      岐阜
  • [学会発表] カドミウム長期曝露による腎尿細管特異的なp53の過剰蓄積とアポトーシス誘導

    • 著者名/発表者名
      李 辰竜,徳本真紀,岩田紘司朗,藤原泰之,佐藤雅彦
    • 学会等名
      日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2012
    • 発表場所
      岐阜
  • [学会発表] カドミウムのp53依存的アポトーシス誘導における腎尿細管特異性

    • 著者名/発表者名
      李 辰竜,徳本真紀,藤原泰之,岩田紘司朗,佐藤雅彦
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜

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公開日: 2014-07-24  

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