研究課題/領域番号 |
24590163
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
藤原 泰之 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (40247482)
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キーワード | 薬学 / 有機金属化合物 / 錯体分子 / メタロチオネイン / 血管内皮細胞 / 生体防御因子 / 動脈硬化 |
研究概要 |
本研究は、無機化合物と有機化合物の両方の特性を有する有機金属化合物・錯体分子(ハイブリッド分子と呼ぶ)に着目し、(1)各種培養細胞において生体防御因子の一つであるメタロチオネインを効率よく誘導合成する化合物を見いだす、(2)次いで、メタロチオネイン誘導合成能を有するハイブリッド分子をツールとして活用し、新たなメタロチオネイン誘導合成機構の解明を目指す、(3)また、実験動物を用い、個体レベルでのハイブリッド分子の有用性を確認し、動脈硬化症などの各種疾患の予防と治療に貢献できる有用なハイブリッド分子を提案することを目的としている。 平成24年度は、血管内皮細胞に対してメタロチオネイン合成を効率よく誘導するハイブリッド分子として、120化合物の中からジエチルジチオカルバミン酸銅〔Cu(II)(Edtc)2〕を見いだした。また、Cu(II)(Edtc)2で前処理した細胞では、カドミウムや亜ヒ酸による細胞毒性が軽減されることを明らかにした。 平成25年度は、血管内皮細胞に対して高メタロチオネイン誘導能を示したCu(II)(Edtc)2の関連化合物群についてメタロチオネイン誘導作用を検討したが、Cu(II)(Edtc)2よりも強い活性を示す化合物を見いだすことができなかった。一方で、Cu(II)(Edtc)2の作用発現機構を解析し、Cu(II)(Edtc)2は細胞内に取り込まれやすいことや、Cu(II)(Edtc)2によるメタロチオネイン合成誘導には、重金属応答性転写因子であるMTF-1が関与するが、酸化ストレス応答性転写因子であるNrf2は関与しないことをsiRNAを用いたノックダウン実験により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画としては、(1)平成24年度の研究で見いだされたCu(II)(Edtc)2をリード化合物として、Cu(II)(Edtc)2よりもさらに有用な活性を示す化合物を探索すること、(2)あわせて、Cu(II)(Edtc)2によるメタロチオネイン誘導合成機構を明らかにすることを目的とした。 平成25年度の各種検討により、(1)については、残念ながら現時点においてはCu(II)(Edtc)2よりもさらに有用な活性を示す化合物は見いだされていないが、現在も継続して探索中である。(2)に関しては、研究実績の概要でも示したように、Cu(II)(Edtc)2は細胞内に取り込まれやすいことや、Cu(II)(Edtc)2によるメタロチオネイン合成誘導には、重金属応答性転写因子であるMTF-1が関与することを明らかにした。したがって、平成25年度の研究計画にそって研究を行い、不十分な点はあるものの、上記のような結果を得られたことから、現在までの達成度としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、当初の研究計画にそっておおむね順調に進展していると考えているので、基本的には平成26年度も研究実施計画に基づき研究を遂行していく予定である。 平成26年度では、これまでに行ってきた高メタロチオネイン誘導能を有する低毒性なハイブリッド分子の探索研究を継続するとともに、血管構成細胞以外の各種培養細胞を用いて、メタロチオネイン合成誘導能を示す化合物の作用を比較検討し、ハイブリッド分子の細胞選択性に関する情報を得ることを目的とする。また、細胞レベルの検討により見いだされた有用なハイブリッド分子を野生型マウスあるいは遺伝子改変マウス(動脈硬化モデルマウスなど)に投与し、ハイブリッド分子の個体レベルでの有用性や組織分布、毒性などについて検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)として、20,067円が発生した。これは、年度末(3月末)に購入を予定していた試薬の購入を延期したためである。購入を予定していた試薬は購入後速やかに使用(2週間以内)する必要があり、実験計画がずれ込んでしまったために、購入を見送った。 今年度(平成26年度)に実験の準備が整った段階で購入予定であった試薬を入手し、実験に供する。
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