研究実績の概要 |
Mycobacterium avium complex (MAC) による感染は、近年、著しく増加している肺MAC症(経気道感染)と全身播種性MAC症(経腸感染)の大きく2つに分けられる。 平成24年度は、これまで報告が無かった肺 MAC症患者由来株(M. avium TH135株)のゲノム解析を行い、全塩基配列の決定を行った。そして、HIV陽性患者由来のM. avium 104株(経腸感染由来)のゲノムと比較を行った結果、両ゲノムには大きな違いが見られ、それぞれに特異的な領域が存在し、それらの領域には病原性に関与している多くの遺伝子が存在していた。 平成25年度は、M. avium TH135株に存在しているプラスミド(pMAH135)の解析を行った。全塩基配列の決定およびその特徴を調べた結果、pMAH135は194,711 bpの巨大プラスミドであり、これまで報告されたM. avium由来のプラスミドとは、その相同性において全くことなる新規のプラスミドであった。さらに、このプラスミド上にコードされている遺伝子の特徴を調べた結果、病原性や薬剤耐性に関与する重要な遺伝子が存在していた。 平成26年度は、M. aviumの分離株を用いて、pMAH135の存在を調べた。その結果、HIV陽性患者由来株に比べて、肺MAC症患者由来株に多く存在した。しかし、ブタ由来株にはほとんど存在しなかった。さらに、M. avium分離株のVNTR(variable number tandem repeats)解析を行った結果、pMAH135を保有している菌株は特定のクラスターを形成した。以上の結果から、pMAH135は肺MAC症の発症、さらに宿主特異性に関与していることが示唆された。さらに、pMAH135を保有する菌株は、特定のVNTR genotypeを示したことは興味深い結果である。
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