研究課題/領域番号 |
24590165
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
天野 富美夫 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (90142132)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サルモネラ / SEp22(DPS) / 栄養因子 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
本年度は、サルモネラ病原性環境分離株を前培養して対数増殖期に移行させた後、SEp22タンパク質の発現が誘導される乾燥耐性獲得系を用い、RT-PCR法で定量的にSEp22 mRNAを測定した。この時、SEp22と共に乾燥耐性が誘導されるLB培地中と、SEp22が誘導されず乾燥耐性も誘導されない生理食塩水中での乾燥を行った。その結果、乾燥開始30分後にはLB培地中の菌において急激なsep22(dps)遺伝子発現が観察され、4時間まで経時的にSEp22mRNAが増加した。一方、対照の生理食塩水中の菌では、乾燥の過程でこのような変化は全く観察されず、非常に低いレベルの発現に留まった。本研究費で購入したRT-PCR装置(Light Cycler Nano DNA Green Pack)が非常に役立った。 次に、カサミノ酸を分画し、SEp22誘導因子の精製を行った。そのため、高感度の生物試験法として、SEp22の発現が必須要因の一つである、サルモネラの乾燥耐性獲得系を用いた。微量のカサミノ酸由来栄養因子を定量的に測定するため、従来の評価系を改良し、菌を懸濁する溶液を、10% M9(グルコース不含)添加生理食塩水に変更した。これによって、最終濃度0.04-4 ug/mLの範囲で、カサミノ酸の用量依存的に、栄養因子依存性サルモネラ乾燥耐性獲得を評価することが出来た。また、カサミノ酸のHPLCによる分画の過程で、乾燥耐性獲得性に関与する栄養因子の失活が観察されたため、溶出に用いる溶媒系の影響を評価した。その結果、トリフルオロ酢酸が著しい失活作用を示したため、酢酸、及びギ酸を試みたところ、失活作用が低いことが分かった。 以上の結果から、カサミノ酸分画の分離精製と、SEp22の誘導活性ならびに乾燥耐性獲得活性をSEp22mRNAの定量によって評価する実験系が確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度のおもな研究目的である、SEp22の発現を誘導する栄養因子の精製に関して、まず、SEp22の発現を定量するため、RT-PCRを用いた評価系が当初の予想通りに稼働したからである。また、その測定結果が新規の結果を多く含み、SEp22の発現が及ぼす、サルモネラの乾燥耐性獲得やストレス応答などへの影響が示唆された。次に、SEp22の発現を誘導する栄養因子として、カサミノ酸の分画からHPLCによって有効成分を精製するための条件が設定されたからである。
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今後の研究の推進方策 |
カサミノ酸の中の、SEp22発現誘導因子を精製し、同定する。その分子的な性質を明らかにするとともに、サルモネラの病原性発現への影響を、試験管内試験、及びマウスを用いた感染実験系で評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
カサミノ酸の中に含まれるSEp22誘導因子を精製・同定する。そのアミノ酸配列を、対照の誘導活性陰性分画中のポリペプチドのアミノ酸配列と比較し、SEp22誘導に必要な特定の配列を明らかにする。そのため、PCR等、遺伝子発現の解析・定量試薬を購入する。 次に、この同定したSEp22誘導活性型ポリペプチドを大量に生成し、サルモネラに投与して、実際にSEp22を誘導するか否かを確認する。さらに、SEp22を必須とするサルモネラ乾燥耐性獲得系、過酸化水素抵抗性試験、ならびにマウスへのサルモネラ感染モデルにおいて、当該ポリペプチドがそれぞれSEp22の発現誘導を通じて、サルモネラにこれらの機能を賦与することができるか、を検討する。そのため、各実験系において使用する試薬、ガラス器具、ならびに動物を購入する費用に充てる。また、研究成果の発表ならびに研究打ち合わせ旅費として、旅費を使用する。
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