平成25年度の結果から、カサミノ酸にはペプチド以外の分解物が含まれていることが明らかになったので、本年度は、カゼインのトリプシン分解物を栄養因子の起源とした。実験は、対数増殖期の病原性サルモネラ菌株を用い、カゼインのトリプシン分解物またはこれをHPLCにかけて分画したものを栄養因子として用いた。SEp22の発現誘導の評価系には、昨年度と同様、微量で活性測定が可能な乾燥耐性獲得の誘導系を最初に用い、次にRT-PCR法で定量的にSEp22 mRNAを測定する方法、および菌の抽出物をSDS-PAGE/ Western blottingにて分析する方法を併用した。このmRNAの測定において、本研究費で購入したRT-PCR装置(Eco Real-Time PCR System)を活用した。 まず、乾燥耐性獲得の誘導系を評価系に用い、カゼインのトリプシン分解の条件を検討した結果、室温で一晩、緩和な条件で処理する方法が適することを見出した。次に、この分解物を2種類のHPLCの条件で分画した結果、水様性ペプチドの溶出部分に活性が回収されたため、これを集めて濃縮した。続いて、対数増殖期のサルモネラをM9培地中に懸濁し、この活性分画を添加して37℃、30分間加温してSEp22タンパク質の誘導を調べた。その結果、わずかではあるがSEp22タンパク質の発現が増加した。さらに、通常の泳動条件の18.7 kDaよりもやや高分子量側にシフトした位置にSEp22が検出された。また、上記と同様の条件下で加温した菌において、37℃、5~30分間後にSEp22mRNAの発現が上昇することが示唆された。 現在、このカゼインのトリプシン分解物のペプチドの一次構造を解析している。なお、カゼインのトリプシン分解物よりも上記のHPLC分画方が、数倍活性が高かったことから、カゼインの分解物の中には、SEp22発現誘導物質のほかに、発現阻害物質が含まれている可能性が示唆された。
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