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2012 年度 実施状況報告書

体内レドックス制御によるインスリン抵抗性発症予防とその作用機序

研究課題

研究課題/領域番号 24590166
研究種目

基盤研究(C)

研究機関摂南大学

研究代表者

上野 仁  摂南大学, 薬学部, 教授 (20176621)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード糖尿病 / セレン / 亜鉛 / インスリン抵抗性 / レドックス / ROS / 微量必須元素 / 欠乏
研究概要

Insulin標的組織におけるredox制御によるinsulin抵抗性の発症予防およびその作用機序を解明することを目的として、短期間で糖尿病を発症する動物モデルを用いて検討した。これまではICR雄性マウスに対してstreptozotosin (STZ)と、その標的組織である膵島β細胞で枯渇しやすいnicotinamide (NA)をそれぞれ100 mg/kgおよび120 mg/kgで併用投与することにより短期誘発糖尿病マウスを作製していた。しかし、ICRマウスはSTZに対して感受性が高く、さらにセレン欠乏によって糖負荷時の血漿中insulinが枯渇し、随時血糖値も500 mg/dLを超えてしまっていた。そこで、もう少し緩和な条件を検討するため、NAの投与量は変更せずにSTZの投与量を50 mg/kgと80 mg/kgに変えてMF飼料、セレン欠乏飼料または亜鉛欠乏飼料を与えながら、1週間ごとの随時血糖値、5週間後の血中HbA1C濃度および糖負荷後の経時的血糖値を測定した。その結果、いずれもSTZ投与量ならびにセレンまたは亜鉛欠乏飼料摂取にかかわらず有意な差は認められず、5週間後の血中insulinおよびadiponectin濃度だけが80 mg/kg STZ投与によって低下した。そのため、低用量のSTZ投与では糖尿病マウスモデルの作製が困難であることが認められたため、これまでと同様の用量において短期誘発糖尿病マウスモデルを作製することにした。
120 mg/kg NAと100 mg/kg STZ投与による短期誘発糖尿病マウスモデルにおいては、5 週間後の糖負荷後血糖値がセレン欠乏飼料または亜鉛欠乏飼料摂取によりMF飼料摂取に比べて有意に高値を示すことが認められた。以上の結果から、セレン欠乏のみならず、亜鉛欠乏によって耐糖能が低下することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

短期誘発糖尿病マウスモデルの作製において、ヒトの2型糖尿病の病態になるべく近いモデルとして血中insulinレベルの低下を主体とするよりもinsulin抵抗性を招くようななるべく緩和な条件を見出したかったため、まずSTZ投与量の見直しの検討を行った。しかし、検討した50 mg/kgおよび80 mg/kg STZ投与量において、セレン欠乏飼料または亜鉛欠乏飼料を摂取させたにもかかわらず、通常のMF飼料摂取群やSTZ未処置群と比べて糖負荷後の血糖値に有意な差が認められなかった。このため、これらの緩和な条件で短期誘発糖尿病マウスモデルを作製することができず、またこれらの条件においてセレンまたは亜鉛欠乏と耐糖能の関連性に関する成果を上げることができなかった。そこで、これまで検討を行ってきた120 mg/kg NAと100 mg/kg STZ投与条件にもどし、再度セレン欠乏飼料または亜鉛欠乏飼料を摂取させた実験を行ったため、当初の研究計画通りに研究が進まなかった。
従来のSTZ/NA投与条件において、セレン欠乏飼料摂取のみならず、とくに亜鉛欠乏飼料摂取において耐糖能がより低下したことは、次年度以降の研究の方向性を示しており評価できるものと思われる。

今後の研究の推進方策

従来のSTZ/NA投与条件において、セレン欠乏飼料摂取のみならず、とくに亜鉛欠乏飼料摂取において耐糖能がより低下することが認められた。これらの短期誘発糖尿病マウスモデルの組織中セレンおよび亜鉛含有量がすでに欠乏状態にあるのか、その途中過程にあるのかを把握することは重要である。さらに、亜鉛欠乏試料中のセレン含有量は、通常飼料であるMF飼料中のセレン含有量に比べると低い。
そこで、これらの投与条件のマウスモデルの組織中セレンおよび亜鉛含有量を測定し、セレンおよび亜鉛状態を把握するとともに、セレンおよび亜鉛欠乏飼料を与えながらセレンまたは亜鉛含有飲料水を摂取させた時の耐糖能および血中insulinレベルに対する影響について検討を行う。

次年度の研究費の使用計画

1) 短期誘発糖尿病マウスモデルの耐糖能および血中insulinレベルとセレンおよび亜鉛状態の把握
120 mg/kg NAと100 mg/kg STZ投与による短期誘発糖尿病マウスモデルにおいて、MF飼料、セレン欠乏飼料または亜鉛欠乏飼料を6週間摂取させたときの血漿、肝臓および膵臓中セレンおよび亜鉛含有量を測定する。この結果に基づき、このモデルマウスにおける耐糖能および血中insulinレベルと組織中セレンおよび亜鉛状態との関連性を把握する。
2)短期誘発糖尿病マウスモデルの耐糖能および血中insulinレベルに対するセレン投与または亜鉛投与の影響
1)の条件下で最も影響を受けやすい欠乏状態において、SeMetおよび(または)塩化亜鉛を栄養生理レベルまで段階的に投与したときに経日的に空腹時および糖負荷後の血糖値、血中FFA濃度、 ELISA法による血中インスリン濃度およびadiponectin濃度、ならびに肝臓中のglycogen量を測定することによって、セレンおよび亜鉛の単独または併用投与時の耐糖能および血中insulinレベル改善作用について明らかにする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Difference in glucose intolerance between C57BL/6J and ICR strain mice with streptozotocin/nicotinamide-induced diabetes2012

    • 著者名/発表者名
      Shimizu R, Sakazaki F, Okuno T, Nakamuro K, Ueno H.
    • 雑誌名

      Biomed Res

      巻: 33 (1) ページ: 63-66

    • DOI

      10.2220/biomedres.33.63

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Methylseleninic acid (MSA) inhibits 17β-estradiol-induced cell growth in breast cancer T47D cells via enhancement of the antioxidative thioredoxin/ thioredoxin reductase system2012

    • 著者名/発表者名
      Okuno T, Miura K, Sakazaki F, Nakamuro K, Ueno H.
    • 雑誌名

      Biomed Res

      巻: 33 (4) ページ: 201-210

    • DOI

      10.2220/biomedres.33.201

    • 査読あり
  • [学会発表] 短期誘発糖尿病マウスモデルに対するセレンおよび亜鉛欠乏の影響評価

    • 著者名/発表者名
      村野晃一、福田葉月、米光涼、松尾有起、荻野泰史、荒川友博、奥野智史、上野仁
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜

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公開日: 2014-07-24  

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