研究課題/領域番号 |
24590166
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
上野 仁 摂南大学, 薬学部, 教授 (20176621)
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研究分担者 |
荻野 泰史 摂南大学, 薬学部, 助教 (80617283)
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キーワード | 糖尿病 / セレン / 亜鉛 / インスリン抵抗性 / レドックス / ROS / 微量必須元素 / 欠乏 |
研究概要 |
Insulin標的組織におけるredox制御によるinsulin抵抗性の発現予防およびその作用機序を解明することを目的として、100mg kg STZおよび120 mg/kg NA投与による短期誘発糖尿病マウスモデルを用いて検討を行った。その結果、通常飼料、セレン欠乏飼料および亜鉛欠乏飼料を5週間摂取させたときの糖負荷後血糖値は、亜鉛欠乏飼料群で最も高く、ついでセレン欠乏飼料群、通常飼料群の順に高値を示した。しかし、1~5週間の摂取期間中の随時血糖値では、各群間で有意な差は認められず、5週間後の血漿中HbA1c値においても同様であった。 亜鉛摂取量を変化させた場合の影響を調べるため、短期誘発糖尿病マウスモデルに亜鉛欠乏飼料を摂取させるとともに、通常飼料摂取時とほぼ同程度の亜鉛摂取量となる 10 mg Zn/kg 投与量とその2倍量である 20 mg Zn/kg 投与量で硫酸亜鉛を1週間に6日間、5週間にわたり強制経口投与し、耐糖能に対する亜鉛摂取の影響を検討した。その結果、10 mg Zn/kg 投与群の随時血糖値は、通常飼料摂取群との間に有意な差は認められなかったが、20 mg Zn/kg 投与群の随時血糖値は、通常飼料群よりも低値を示す傾向が認められた。しかし、血中insulin濃度およびadiponectin濃度に対しては、亜鉛投与による有意な改善効果は認められなかった。また、肝臓中の亜鉛量は、20 mg Zn/kg投与群でも通常飼料摂取群に比べて低かった。 以上の結果から、硫酸亜鉛を通常飼料よりも多く摂取させることにより、随時血糖値が低下する可能性が示唆されたが、無機の亜鉛化合物投与によるinsulin抵抗性改善作用は期待できないことが示唆された。そのため、今後は、セレンのredox制御によるSepp1高発現とredox制御によるinsulin抵抗性との関連性について検討していくことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究当初は、セレンと亜鉛の組合せによるredox制御によりinsulin抵抗性の発現予防と作用機序について計画していた。今回の結果から、亜鉛によるredox制御とinsulin抵抗性との関連性に関する検討や研究成果は期待できないので、「やや遅れている」と言うよりも当初の計画を少し修正する必要が出ている。そのため、今後の研究では当初の計画にあった、Sepp1高発現とredox制御によるinsulin抵抗性との関連性の検討において、セレン単独でのredox制御による検討を実施することになった。また、あらたに甲状腺ホルモン代謝とinsulin抵抗性との関連性について検討を加えることにした。
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今後の研究の推進方策 |
1) Sepp1高発現とredox制御によるinsulin抵抗性との関連性の検討 3T3-L1脂肪細胞およびHepa 1-6肝癌細胞を用い、SeMet高濃度処理によるSepp1高発現下においてglucose取り込み、FFA遊離、GPx1およびSepp1などのセレンタンパク質の発現量を解析し、すでに開発したcarboxy-DCFH-DAを用いたフローサイトメトリーやArray Scan法による細胞内ROS量、insulin抵抗性の指標としてのresistinおよびretinol binding protein 4 (RBP4)発現量などを検討し、redox制御とinsulin抵抗性との関連性をより詳細に明らかにする。 2) 甲状腺ホルモン代謝とinsulin抵抗性との関連性の検討 甲状腺ホルモンであるthyroxine (T4)は、セレン含有酵素の一つであるiodothyronine deiodinase (I~III)により活性型のtriiodothyronine (T3)に変換される。T3は、peroxisome proliferator-activated receptorγを活性化して脂肪細胞の脂肪蓄積を亢進させることが報告されている。そこで、健常人でのセレンの過剰状態がSepp1と同様にiodothyronine deiodinaseによるT3活性化や分解を介してinsulin抵抗性の原因となるのかどうかについて、3T3-L1脂肪細胞およびHepa 1-6肝癌細胞を用いて予備的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも動物実験にかかる費用が安くついたためと、なるべく高価な試薬やキットを使用せずに自前で測定できたため 次年度から培養細胞を用いてセレンタンパク質発現とinsulin抵抗性の関連性について検討を行う。試薬や培養器具の購入のため、今まで以上に多くの研究費が必要である。
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