研究課題/領域番号 |
24590166
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
上野 仁 摂南大学, 薬学部, 教授 (20176621)
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研究分担者 |
荻野 泰史 摂南大学, 薬学部, 助教 (80617283)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インスリン抵抗性 / レドックス / セレン / 糖尿病 / ROS / 微量必須元素 |
研究実績の概要 |
これまでに、亜鉛によるredox制御とinsulin抵抗性との関連性は低いことがわかってきたため、セレン単独でのredox制御やSepp1高発現による検討を実施することにした。また、あらたに甲状腺ホルモン代謝とinsulin抵抗性との関連性について検討を加えることにした。今年度は、いきなり動物実験を行うのではなく、insulin受容体を有するHepa 1-6肝細胞および3T3-L1脂肪細胞を用いて検討した。 Hepa 1-6肝癌細胞のセレンタンパク質合成に対するSeMetまたはFFA処理の影響を調べた結果、SeMet処理により濃度依存的にSepp1およびGPx1 mRNA発現量が有意に増加した。FFA処理によりinsulin抵抗性を惹起させると、Sepp1およびGPx1 mRNA発現量が増加したが、GPx4 mRNA発現量は減少した。そのため、insulin抵抗性の発現にSepp1およびGPx1が関与する可能性が示唆された。 甲状腺ホルモン代謝とinsulin抵抗性との関連性について検討した。3T3-L1脂肪細胞を用いてiodothyronine deiodinase (Dio)合成に対する影響を調べた結果、insulin処理によりDio2およびDio3 mRNA発現量が増加した。一方、Hepa 1-6肝癌細胞を用いてSeMet処理とDio合成との関連性を調べたところ、SeMet濃度依存的にDio1およびDio3 mRNA発現量が有意に低下した。また、FFA処理ではDio mRNA発現量に有意に影響は認められなかった。そのため、甲状腺ホルモン代謝とinsulin抵抗性との関連性は低い可能性が示唆された。 比較的高いセレン負荷により、セレンタンパク質発現を介してinsulin抵抗性を惹起する可能性が示唆されたため、in vivoにおいてセレン負荷とinsulin抵抗性との関連性を短期間で検討するためにinsulin抵抗性マウスモデルの構築に関する予備的検討を行った。2型糖尿病マウスモデルであるNSYマウスに高脂肪飼料を摂取させたところ、早期に血糖値および血漿中insulin値が上昇することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までは、短期誘発糖尿病マウスモデルを用いた検討により、亜鉛によるredox制御とinsulin抵抗性との関連性は低く、当該研究の目的の一つであるmetallothionein発現などとinsulin抵抗性予防との関連性をさらに検討する必要性はないと思われた。しかし、今年度では予備的検討ながらSepp1ならびに酸化ストレス防御系のセレンタンパク質発現とinsulin抵抗性との間に関連性の可能性が示唆されたため、当該研究は少し進んだと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
Insulin受容体を有するHepa 1-6肝細胞および3T3-L1脂肪細胞を用い、それぞれFFA処理およびinsulin長時間処理により、その細胞内シグナル伝達系を抑制してinsulin抵抗性を発現した系においてセレンタンパク質発現との関連性をセレンによるredox制御とSepp1発現が直接insulin抵抗性に関与していることが考えられた。そのため、当該研究の最終目標であるinsulin 抵抗性の発症予防に最も寄与する条件や作用機構に少しでも迫るため、当該研究の最終年度においてinsulin抵抗性マウスモデルを作製し、これらのセレンタンパク質がin vivoにおいてどのように関与しているのかを明らかにする。 1) Insulin抵抗性マウスモデルの作製の検討 2型糖尿病マウスモデルであるNSYマウスに高脂肪飼料を摂取させることにより、糖尿病を発症する40週齢よりも早期にinsulin抵抗性を発現する動物モデルを作製する。このマウスモデルのinsulin標的組織中のセレンタンパク質の発現とinsulin抵抗性の関連性の検討を実施する。 2) セレン投与insulin抵抗性マウスモデルにおけるSepp1およびGPx1とinsulin抵抗性との関連性の検討 1)で作製したinsulin抵抗性マウスモデルに高脂肪飼料とともに、生理レベル内の高用量のセレンを摂取させ、セレン負荷によるinsulin抵抗性との関連性について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
適正に必要な予算執行を行った結果、残額が研究に必要な物品のうち購入可能な金額以下となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該研究の最終年度であり、次年度使用額を含めて適正に予算執行する。
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