研究概要 |
今年度、ラットおよびマウスから腎臓の尿細管を摘出し、近位尿細管のS1, S2, S3領域それぞれからの細胞の単離・樹立に挑戦したが、現在のところ細胞の単離には至っていない。腎臓に関しては、マウス由来の細胞を入手できたため、今後はS1, S2, S3領域由来細胞を用いて解析を進めていく。 Cd毒性の標的臓器である消化管由来する細胞におけるCd輸送機構の解析も実施した。消化管モデル細胞としてCaco-2細胞を使用し、カップ培養システムを用いて管腔側と血管側のそれぞれの取り込みを調べた。これまで消化管におけるCdの吸収にはDMT1が重要であることが報告されている。しかし、それ以外の輸送体の検討はほとんど行われていなかった。そこで、Caco-2細胞においてZIP14の発現を抑制した結果、0.1, 1μMのCd取り込みがそれぞれ対照群の70%, 54%に低下した。一方、DMT1を発現抑制すると5μMのCd取り込みが対照群の約80%にまで低下したが、0.1, 1μMのCdの取り込みは変化しなかった。また、ZIP8を発現抑制すると、0.1μMのCdの取り込みはわずかに低下したが、1, 5μMの取り込みは変化しなかった。以上の結果より、消化管におけるCd吸収において、特に低濃度のCdの吸収については、DMT1以外にZIP14が重要な役割を果たす可能性を見出した。 Mn毒性の標的組織である脳におけるMn動態を明らかにするため、本年度はヒト神経芽細胞腫であるSH-SY5Y細胞を使用して解析を行った。SH-SY5Y細胞では亜鉛輸送体のZIP8およびZIP14, DMT1が確かに発現していることを確認した。また培地に重炭酸を添加するとZIP8およびZIP14を介したMnの取り込みが上昇することが報告されているが、SH-SY5Y細胞においても重炭酸添加によりMn取り込み効率が約5倍増加した。
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