研究概要 |
食の欧米化による生活習慣病は現代社会において克服すべき重大疾病である。近年、糖尿病による合併症の発症機構として、グルコースなどの還元糖とアミノ基を有するタンパク質などが非酵素的反応(メイラード反応)の生成物であるAGEs と呼ばれる低分子化合物の存在が注目されている。本研究ではAGEs の一種、ジヒドロピラジン類(DHP 類)を用い、1) DHP類 による毒性評価を酸化的ストレスの発生、並びに生体内機能性高分子化合物の酸化的 修飾を焦点に解析し、2) In vivo における DHP類の検出、並びにその定量による実際の症例との関連性を明らかにする。 平24年度の研究実績として、3 種のDHP(DHP-1: 2,3-Dihydro-5,6-dimethylpyrazine, DHP-2: 2,3-Dihydro-2,5,6-trimethylpyrazine, DHP-3: 3-Hydro-2,2,5,6-tetramethylpyrazine)を、ヒト肝癌細胞HepG2細胞に曝露した結果、いずれの DHPも時間依存的な細胞死を示した。細胞内の還元型グルタチオン濃度を測定した結果、DHPの曝露による変化は認められなかった。これに対し、酸化型グルタチオン濃度は、DHP-3 処理においてのみ、曝露 12 時間後から顕著な増加が認められた。さらに、DHP-1とDHP-2の曝露における 還元型/酸化型-グルタチオン比は、コントロールに比べ変化が見られなかったが、DHP-3 曝露に伴い顕著な減少が認められた。以上の結果から、DHP-1、DHP-2およびDHP-3 は、いずれも HepG2 細胞に対して細胞障害性を示すことが明らかとなった。また、その機構は、DHP-1とDHP-2は同じである可能性が考えられるものの、DHP-3 は異なっていることが示唆された。
|