糖尿病による合併症の発症機構として、グルコースなどの還元糖とアミノ基を有するタンパク質などとのメイラード反応により生成するAGEs と呼ばれる糖化反応物の存在が注目されている。AGEsの一種であるジヒドロピラジン ( DHP ) 類は、酸化により糖尿病患者の血中や尿中で増加するピラジン類に変化するが、DHP 類による細胞毒性の報告はなく有効な測定法もなかった。本研究では、これらDHP類に注目し、DHP類 による毒性評価を酸化的ストレスの発生、並びに生体内機能性高分子化合物の酸化的修飾を焦点に解析し、DHP類の検出法の基盤について検討した。 DHP曝露したHepG2 細胞では、抗酸化ストレス遺伝子GCLC、GCLM、HO-1などの発現が著しく増加していた。さらに、抗酸化ストレス転写因子Nrf2の細胞内蓄積が抗酸化ストレス遺伝子転写誘導に先んじて起こることが明らかになった。また、Nrf2結合配列であり、抗酸化ストレス遺伝子発現を調節する酸化ストレス応答配列 (ARE) 依存的であることが明らかになった。 DHP曝露したHepG2 細胞について、F-actinの局在化の変化、特に細胞接着面でのF-actinの減少が観察された。細胞周期解析の結果から、DHP暴露細胞ではG2/M期細胞の割合が増加し、caspase-3の活性化が観察された。これらの結果より、DHPによる細胞骨格の変化を介し、細胞接着能の低下、細胞周期のG2/Mアレストならびにcaspase活性化による細胞死を誘導する機構が解明され、DHP毒性測定の基盤となる新たな知見が得られた。
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