研究課題/領域番号 |
24590171
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
手島 玲子 国立医薬品食品衛生研究所, 食品部, 部長 (50132882)
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研究分担者 |
中村 亮介 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (50333357)
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キーワード | 食物アレルゲン / 小麦グルテン / 酸加水分解 / 経皮感作 / 脱アミド化 / 交差反応 |
研究概要 |
食物アレルゲンの物理的処理に伴う抗原性の変化の解析並びに高感度検出法の開発に関し,以下の3項目の検討を行った. (1) 食物アレルゲンとして、小麦グルテンを用いて、物理的処理として、塩酸、水酸化ナトリウムを 用いる加水分解の経時的処理を行った。タンパク質の分子量変化をサイズ排除クロマトグラフィー及びSDS-PAGEで確認し、グルタミンの脱アミド化も観察した。また、タンパク質の抗原性(感作性)の変化については、BALB/cマウスを用いる皮膚感作性試験により解析した。その結果、塩酸(0.1N HCl), 100℃, 30分処理で、分子量の増加及び脱アミド化が観察され、皮膚感作能も観察された。一方、9時間処理では、分子量は顕著に低下し、皮膚感作能はみられなかった。アルカリ(0.1NNaCl)による加水分解では、経時的に分子量が減少し、30分加水分解処理では、経皮感作能がみられ、12時間後には、経費感作能は観察されなかった。以上よりグルテン加水分解後の分子量が感作性に関与していることが示唆された。(2)グルテンのトランスグルタミナーゼ処理により、加水分解小麦(HWP)患者血清中IgE抗体との反応性の上昇が観察され、脱アミド化されたグルタミンが、処理前のグルテンには存在しない新しい抗原決定基に関与していることが示唆された。(3) 昨年同定した茶のしずく石鹸に含有されていたHWP(グルパール19S)に特異的なペプチドに対するウサギ抗体を作成し、このペプチド抗体が、グルテンとグルパール19S を見分けることのできる抗体であることを確認した。この抗体を用いて、HWPの高感度検出法の開発を継続して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小麦グルテンの加水分解の処理の方法及び反応時間の違いによる分子量変化、グルタミンの脱アミド化並びに感作性の変化を明確に捉えることができた。動物による経皮感作による即時型アレルギーモデルとして、BALB/cマウスを用いる感作モデルを確立した。1年目に同定した酸加水分解グルテン特異的ペプチドの抗体を作成し、グルテンの酸加水分解処理の有無の検出に成功した。また、酸加水分解処理により、グルタミンの脱アミド化が引き起こされるが、脱アミド化が加水分解小麦の抗原性n大きくかかわることを、グルテンのトランスグルタミナーゼ処理により、明確にとらえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、(i)平成25年度に作成した酸加水分解グルテン特異的ペプチドに対する抗体を用いた高感度検出系の開発、(ii)へアレスマウスを用いる交差反応性の解析、(iii)経皮感作のメカニズム解析のためのランゲルハンス細胞等の培養細胞を用いるin vitroモデル系の開発、及びバイオマーカーの探索として、血中のTSLPに加えてTh2型T細胞の活性化に伴い発現の上昇する他の因子の解析を行う。(iv)小麦以外のコラーゲン等の種々のアレルゲンタンパク質の物理的処理に伴う抗原性の変化の解析、を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
酸加水分解グルテン特異的ペプチドに対する抗体の作成並びに性質の解析に時間を要し、 高感度検出系の開発まで十分行うことができなかった。 今年度は、(i)酸加水分解グルテン特異的ペプチドに対する抗体を用いて、高感度検出系の開発を行う、とともに、(ii)へアレスマウスを用いる交差反応性の解析、(iii)経皮感作のメカニズム解析のためのランゲルハンス細胞等の培養細胞を用いるin vitroモデル系の開発、(iv)小麦以外のコラーゲン等の種々のアレルゲンタンパク質の物理的処理に伴う抗原性の変化の解析、を行う。
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