研究実績の概要 |
食物アレルゲンの物理的処理に伴う抗原性の変化の解析並びに高感度検出法の開発に関し,3年間で以下の4項目の検討を行った.なお、(3),(4)が平成26年度に実施した成果である。 (1)食物アレルゲンとして、小麦グルテンを用いて、物理的処理として、塩酸、水酸化ナトリウム,酵素を用いる加水分解の経時的処理を行った。タンパク質の分子量変化をサイズ排除クロマトグラフィー及びSDS-PAGEで確認し、グルタミンの脱アミド化も観察した。また、タンパク質の抗原性(感作性)の変化については、BALB/cマウスを用いる皮膚感作性試験により解析した。その結果、塩酸(0.1N HCl),100℃, 30分処理で、分子量の増加及び脱アミド化が観察され、皮膚感作能も観察された。一方、9時間処理では、分子量は顕著に低下し、皮膚感作能はみられなかった。以上よりグルテン加水分解後の分子量が感作性に関与していることが示唆された。一方、アルカリ(0.1NNaCl)、酵素処理では、加水分解による分子量の経時的減少のみが観察された。 (2)グルテンのトランスグルタミナーゼ処理により、加水分解小麦(HWP)患者血清中IgE抗体との反応性の上昇が観察され、脱アミド化されたグルタミンが、処理前のグルテンには存在しない新しい抗原決定基に関与していることが示唆された。(3)(旧)茶のしずく石鹸に含有されていたHWP(グルパール19S)に特異的なエピトープ(オメガ-グリアジンのQPEEPFPE)に対するマウス単クローン抗体を用いて酸処理加水分解コムギの特異的で高感度測定系を開発した。(4)小麦以外でコラーゲン加水分解物についてマウスを用いた皮膚感作性試験を行い、用いた試料での皮膚感作性はみられなかったことを確認した。
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