研究概要 |
遺伝子をコードしない20塩基程度のマイクロRNAは相補的なメッセンジャーRNAと部分的にハイブリダイゼーションし、メッセンジャーRNAから蛋白質への翻訳を制御するという極めてユニークな発現調節機構に携わっていると考えられている。がんにおいてもマイクロRNAはがんの発生、悪性化、転移など、重要な役割を担っていることが示唆されている。本研究では血漿中に存在するマイクロRNAに注目し、化学療法の有効性向上と治療の個別化に有用な知見を得ることを目的とし研究を行った。 本研究は北海道大学(以下、北大)病院薬剤部、北大病院腫瘍内科、北海道がんセンター病院、札幌南三条病院の協力を得て実施した。本研究で分析した血漿は通常の診断行為で得られ、検査後に廃棄される試料であるので、本研究は患者への侵襲性は伴わない観察研究である。初年度である平成24年度には臨床計画を立案し、臨床研究倫理審査委員会の承認を受けた。また、研究のための技術的方法を確立し、同意が得られた数名の患者の血漿について分析を行った。内標準としてRNU6Bを用い、miRNA 16, 21, 26a, 34a, 98, 101, 101*, 124*, 126, 126*, 210, 217 および 630の発現を評価した。いくつかのmiRNAの発現には正の相関があり、miRNA 630はmiRNA 98, 101, 101*, 124, 126, 126*, 210と発現に相関があることが認められた。現在、治療効果とマイクロRNAの関係について調べており、がん治療のバイオマーカーとして応用するための研究を進めている。
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