研究概要 |
目的: 遺伝子をコードしない20塩基程度のマイクロRNA(miRNA)は相補的なメッセンジャーRNAと部分的にハイブリダイゼーションし、メッセンジャーRNAから蛋白質への翻訳を制御するという極めてユニークな発現調節機構に携わっていると考えられている。がんにおいてもマイクロRNAはがんの発生、悪性化、転移など、重要な役割を担っていることが示唆されている。本研究では13名の肺癌患者と71名の大腸癌患者における血漿中miRNAと治療効果の関係について調べた。 方法: miRNA 21, 26a, 34a, 98, 101, 101*, 124*, 126, 126*, 210, 217 と630の発現について、がんの悪性化と関係しているEZH2とMFGE8のメッセンジャーRNA(mRNA)についても分析した。 結果: 肺癌患者においてmiRNA 101*の低発現患者では全生存率が低下すること、大腸癌患者においてMFGE8の発現量が完全切除群の患者において切除不能の患者群より有意に低いこと、切除不能の大腸癌患者においてmiRNA 26aの高発現およびmiRNA 124*の低発現患者の群では全生存率が低下することが認められた。miRNA 124*の前駆体導入によりstructural maintenance of chromosomes 4 (SMC4) およびLow density lipoprotein receptor-related protein 1B (LRP1B)の発現が低下すること、細胞増殖率が低下することも認められた。 結論: miRNA 101*、miRNA 26a、miRNA 124*は肺癌あるいは大腸癌の予後に影響を及ぼしている可能性が、MFGE8の発現量は大腸癌のバイオマーカーとして応用できる可能性も示唆された。
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