研究課題
パーキンソン病患者の治療において、L-ドパ長期療法による特有の有害反応、特にウエアリング・オフ現象はもっとも改善すべき課題である。本研究ではL-ドパ長期投与に伴う薬物動態変化と(Pharmacokinetics)、薬物動態に関与する遺伝的要因(Pharmacogenetics)を明らかにし、個々の患者に最適なL-ドパ療法(併用薬を含む)の設計(患者個別化薬物療法)の開発を目的とする。パーキンソン病患者10名、レビー小体型認知症患者1名を対象とし、L-ドパ(100 mg)単独またはL-ドパ(100 mg)とCOMT阻害薬であるエンタカポン(100 mg)を同時に服用し、服薬前と服薬後に経時的に静脈血を採取し、L-ドパおよびその代謝物である3-O-methildopa(3-OMD)の血中濃度をHPLC-ECDにより測定した。COMTの遺伝子多型はtetra-primer ARMS-PCR 法により調べた。COMTの遺伝子型は高活性型の野生型(H/H)が6例、ヘテロ型の変異(H/L)が4例および低活性型のホモ型(L/L)が1 例であった。エンタカポン投与によるL-dopaのAUC0-4hの変化については、H/H群、H/L群では増加傾向が見られたが、L/Lの1例ではほとんど変化が見られなかった。次にL-ドパの代謝産物3-O-methildopa(3-OMD)についての検討を行ったところ、エンタカポン投与によるL-ドパのAUC0-4hの変化は、H/H群およびH/L群で増加傾向が見られ、L/Lの1例ではほとんど変化が見られなかった。また、このときの3-OMDの濃度増加はL-ドパ単独投与時はL/L<H/L<H/Hの順で増加したが、エンタカポン併用時は全ての遺伝子型で濃度増加は抑制されていた。よってエンタカポンがL-ドパおよび3-OMDの血中濃度に及ばす影響は、COMT遺伝子多型により変動を受けることが示唆された。今後、多施設共同研究を実施し、症例数を蓄積していく予定である。
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Eur J Clin Pharmacol
巻: 37 ページ: 51-58
10.1007/s00228-014-1773-z.