研究課題/領域番号 |
24590178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹内 和久 東北大学, 薬学研究科(研究院), 客員教授 (40260426)
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研究分担者 |
戸恒 和人 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (10217515)
藤原 正子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10466534)
佐藤 恵美子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20466543)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタボローム / フェノーム / NMR / 人工透析 / 廃液 / TCA回路 |
研究概要 |
24年度研究成果 「意義・重要性」慢性腎臓病や人工透析の患者は各人が複雑な原疾患と病態をもち、進行する病態の的確な把握・予測には従来の検査値による診断では不十分な部分が多い。我々はNMRメタボロミクスを用いて、透析患者血漿と透析廃液の測定から治療中に乳酸値が増加することを見出した。本法を用いて新規なオーダーメード医療を構築できる可能性がある。 「成果」透析治療中に起こる痙攣の頻度と強度を表現するface-scaleを新規に作成し、患者アンケートを取った。数回の調査で再現性のある結果を得、フェノームの数値化に成功した。乳酸増加はエネルギー代謝の異常を示唆すると考え、解糖系からTCA回路の連結部の補酵素ビオチンを痙攣症状のある患者に投与したところ著効を見た。患者血中のビオチン測定を行ったところ健常者より蓄積していること、さらにビオチンの効き方とも相関する事を発見した。ビオチン代謝物蓄積が示唆され、フェノタイプとメタボロームとの相関を導いた。また、すでに透析廃液用いて定量NMR測定を確立しており、これによって治療の途中で廃液の乳酸が増加したこと、さらにこの経時パターンは患者個人によって固有であることを発見した。オーダーメード医療につながるものである。乳酸変化パターンが患者によって変わることは、当然原疾患にも依存することを意味している。そこで代謝異常を持たない慢性腎症患者と、糖尿病患者との比較を行った。その結果、治療中の乳酸だけでなくピルビン酸や糖原性アミノ酸であるアラニンも乳酸に連動することが示され、糖尿病を持つものともたないものとで透析治療というストレスに対してメタボローム応答の違いがあることが判明した。各々の疾患についてN=8であるので今後さらにN数を増やして再現性を見たい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回痙攣という病態に対してフェノームの数値化が成功した。以前に疲労について試みたが再現性が悪く困難であった。 さらにメタボローム解析法としてNMRで透析廃液を定量分析する技術を確立した。血液分析の代替としての評価を行った結果、低分子代謝物の定量を目的として代替可能であることを証明できた。本法によりメタボロームとの病態との相関を発見した。主なメタボライトとして乳酸、アラニン、ピルビン酸などエネルギー代謝関連の代謝物の変化が、原疾患に依存することを発見した。代謝異常を持つ糖尿病患者において、これらの変化は単なる慢性腎症を原疾患とする透析患者とは明確に異なるパターンを持つことを発見した。 水溶性ビタミンであるビオチンの投薬という臨床実験も成功した。ビオチンの効き方にも個人差があることがわかり、さらに効き方とビオチン蓄積量の相関が明確に出た。フェノームとメタボロームを関連させ、これによって新たなビオチン代謝物の役割を示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
オーダーメード医療を視野に入れて、まず透析患者の疾患毎のオミクス解析を行う。 代謝異常を持たない慢性腎症患者と代謝異常をもつ糖尿病性腎症の患者の2群に 分けてメタボローム解析を行う。透析は急激な水、電解質、代謝物の除去を行うため患者に代謝的ストレスを与える。このストレスに応答するメタボロームプロファイリングを前述の2つの病態において、特定する。エネルギー代謝を中心にNMRスペクトルで代謝物を定量する。これによって糖尿病患者の代謝特性を把握する新たな指標を提起することが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、オミクスの1つの階層であるプロテオームについて解析を行う。プロレニン受容体濃度をELISA法の構築によって、透析前後血漿において測定する。透析病態、メタボロームとの関連を解析する。健常者との比較を行う。 さらに患者数を増やして廃液NMR測定をおこなうことで、疾患別代謝プロファイルをより確実な物とする。
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