研究課題/領域番号 |
24590178
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹内 和久 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40260426)
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研究分担者 |
戸恒 和人 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (10217515)
藤原 正子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10466534)
佐藤 恵美子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20466543)
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キーワード | メタボローム / フェノーム / NMR / 人工透析 / 透析廃液 / TCA回路 |
研究概要 |
25年度研究成果 「意義・重要性」慢性腎臓病(CKD)や人工透析の患者は複雑な原疾患と病態をもち、進行する病態の的確な把握・予測には従来の検査値による診断では不十分な部分が多い。我々はNMRメタボロミクスを用いて、透析患者血漿と透析廃液の測定から治療中に乳酸、アラニン、ピルビン酸値が増加すること、これらの時間変化パターンが各人で固有であることを見出した。本法を用いて新規なオーダーメード医療を構築できる可能性がある。 「成果」昨年透析廃液用いて定量NMR測定を確立したが、さらに今年度はこれを発展させて、廃液スペクトルでの定量値が血漿中の低分子の定量の代替となることを証明し論文化した。廃液は優れた素材であり、患者にとって非侵襲で、NMR法には低分子定量は制度を保証できる分析上の利点を持つ。本法で廃液スペクトル上での代謝物定量によって、治療中の代謝物の定量と時間変化パターンは患者個人によって固有であることを発見した。オーダーメード医療につながるものである。各患者の背景によって応答パターンが異なることは、当然各人の原疾患をも反映している。代謝異常を持たない慢性腎疾患の患者群と、糖尿病を持つ患者との比較を行ったところ、透析治療というストレスに対してメタボローム応答の違いがあることが判明した。 特に近年増加している糖尿病を原疾患として透析に至る患者の予後が悪いことが問題となっている。我々はNMRメタボロミクスで糖尿病の特有のメタボロームパターンを見いだしており、透析導入後にパターンの変化が速いことも発見した。これらは予後というフェノームとメタボロームの相関を示唆しており、今後の代謝予測系の構築などを展望できるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
透析患者の原疾患(糖尿病であるかないか)や病態(透析歴など)というフェノームと、メタボローム(乳酸、アラニン、ピルビン酸の時間変化)の相関を発見した。慢性腎臓病は複雑な病態を持ち、末期腎不全や透析患者の病態は個別に治療対策が取られてこなかった。今年度新たにプロテオームとして、プロレニン受容体免疫活性物質の検討を加えた。我々のオミクス統合解析によって、分子レベルのプロファイルと病態の相関が判明すると、オーダーメード医療への展望の足がかりとなる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、糖尿病性腎症患者のメタボローム解析を行う。乳酸、アラニン、ピルビン酸などのエネルギー代謝を中心にプロファイリングを行う。ことにケトン体について新規な特徴が出てきているので患者数を増やして解析を行う。新たな透析専門病院との連携が可能となったので、今年度は多施設間での比較解析を行う。透析条件などが異なる事を考慮して、層別解析を行い、患者の生理応答に対してより詳細な知見を得る予定である。近年、糖尿病患者が増加しており、糖尿病由来の透析患者についての応答を中心に解析する。NMR測定および必要に応じてLC/MS測定系を立ち上げる。これらの費用が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
検体提供元である透析病院の都合で、検体数が予定より若干少なかったため。測定にかかる費用が余った。 次年度に検体をいただくことで予定通りの測定と解析を行う。
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