研究課題/領域番号 |
24590179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
降幡 知巳 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80401008)
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研究分担者 |
本橋 新一郎 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60345022)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トランスポーター / がん |
研究概要 |
ヒトorganic anion transporting polypeptide 1B3 (OATP1B3) は、抗がん剤を含む多くの化合物の細胞内取り込みに関与する。最近我々は、がん組織に発現する新規バリアント、cancer-type OATP1B3 (Ct-OATP1B3) mRNAを同定したが、種々のヒトがん組織におけるCt-OATP1B3 mRNAの発現頻度や発現レベル、また、そのタンパク質の機能は明らかとなっていない。そこで本研究では、ヒト肺がん組織を対象としてCt-OATP1B3 mRNAの発現プロファイルを明らかとすること、さらにがん細胞におけるCt-OATP1B3の生物学的機能を明らかとすることを目的とした。 ヒト肺がん組織30検体におけるCt-OATP1B3 mRNA発現量を解析したところ、33% (10/30) の検体でその顕著な発現が認められた。がん組織と隣接正常組織との比較解析をおこなったところ、顕著な発現が認められた全ての検体においてCt-OATP1B3 mRNAはがん組織で優位に発現していた(4~158倍)。一方、ヒト大腸がん由来HCT116細胞を用いてRNAi法によりCt-OATP1B3 mRNAをノックダウンしたところ、コントロール細胞と比較しノックダウン細胞では細胞増殖能の低下が認められた。 以上より、ヒト肺がん組織ではがん化に伴うCt-OATP1B3 mRNAの顕著な発現が、高頻度に認められることが明らかとなった。また、ヒト大腸がん細胞においてCt-OATP1B3は細胞増殖に関与する可能性が考えられた。したがって、今後はより多くのヒト肺がん検体を用いてin vivoにおけるCt-OATP1B3の発現とがんの進行度との関連を確立していくとともに、Ct-OATP1B3による細胞増殖亢進機序を明らかとしていく必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の目的は、1)ヒトがん組織における発現プロファイル(頻度・レベル)を明らかとすること、および2)がん特異的OATP1B3のがん細胞における機能を明らかとすること、である。これら目的に対し我々は順次検討を進めており、下記のとおり得られた成果は概ね期待に沿うものであると考えられることから、上記達成度を選択した。 1)では、ヒト肺がん組織30検体のうち、約33%の頻度においてct-OATP1B3 mRNAが高頻度に認められることを明らかとした。本結果より、少なくともヒト肺がんにおいては概ね3割程度の症例で本遺伝子の発現が認められると期待でき、今後さらに収集した検体を解析することにより、発現頻度や発現量に関してより具体的な数値が得られると期待される。 2)では、大腸がん細胞においてCt-OATP1B3が細胞増殖能に関与する可能性を見出した。これまでにこのような報告はなく、本機能を明確にすることによりCt-OATP1B3の発現意義が明らかとなると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1)ヒトがん組織における発現プロファイル(頻度・レベル)を明らかとすること、および2)がん特異的OATP1B3のがん細胞における機能を明らかとすること、をさらに発展させる。 1)では、現在もヒト肺がん由来試料を収集・解析中であり、これらよりCt-OATP1B3の発現プロファイルのさらなる解明をおこなう。また、解析検体数が増えることから、Ct-OATP1B3の発現と患者背景(がん種・性別・喫煙など)との関連を明らかとする。さらには、Ct-OATP1B3の発現と患者臨床経過との関連解析を進めていく。 2)では、Ct-OATP1B3の細胞増殖能への関与について、大腸がん細胞以外のがん細胞を用いた解析、およびそのメカニズム解明をおこなう。具体的には、他のがん細胞として、肺がんおよび膵臓がんを対象とする。また、Ct-OATP1B3強制発現細胞およびノックダウン細胞を作成し、それらにおけるp21など細胞増殖関連遺伝子の発現レベルを解析する。また、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子変動解析も計画に含めていきたいと思う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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