研究課題
抗認知症薬を抹消への有害な影響を抑え、効果的に中枢へ到達させるための新たな投与経路としての経鼻投与法の確立及びヒトへの臨床応用の可能性を探求するべく、ラットを使用した基礎実験を施行した。8週齢のWKYラットを6群(塩酸ドネペジル低用量0.5㎎/Kg、塩酸ドネペジル高用量2.0㎎/Kg、蒸留水を麻酔下にて経口あるいは経鼻にて投与)に割り付け、投与後1時間の時点で採血(血漿分離)後、脳組織を取り出し、両側の海馬、線条体に分離しコリンエステレース活性の測定を行った結果、線条体においては 経鼻投与の経口投与に対する利点(ChEの阻害活性の優位性)が観察されたが海馬においてはこの傾向は認められなかった。続いて経鼻投与の薬理的有効性の確認を目的としたコリン系障害動物モデルを使った行動実験を行った。コリン系選択性の高いキスカル酸(0.05μmol;/大脳半球/ 総液量0,625μl)を両側中隔野に注入し、1週間の回復時期を待って行動実験(新奇物体認識試験:novel object recognition test)を実施した。行動実験の結果として使用される3つのオブジェクトへの嗜好性に偏りがあることが判明したため(初日トライアルにおいて2つの物体の探索時間に有意差を認めた)、新奇物体に対する興味がトライアルの時間に反映されていないという問題が明らかになった。したがってキスカル酸障害ラットにおいても対照群(偽手術群)との間に有意な差異が観察されず、ドネペジルの投与群の結果の妥当性に疑問が生じる結果となった。現在オブジェクトの嗜好性をコントロールした上で障害モデルでの本試行前の実験を実施中である。経鼻投与に使用する溶解液についても、先行文献によって通常の溶解液では組織分布高率がかなり末梢血中に偏ってしまう可能性が示唆されたため、溶媒の形状を再検討しており調整の最終段階である。
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