研究実績の概要 |
白金系薬物は、繰り返し投与により重篤な過敏症を引き起こすことが知られている。また、白金系薬物であるカルボプラチンによる過敏症の既往のある患者では、末梢血のin vitroでのカルボプラチンの刺激により、好塩基球が活性化することが確認されている。本研究では、カルボプラチンによる好塩基球の活性化機序を解明するために、13名の患者(過敏症発症者5名、未発症者8名)を対象に研究を行った。 ポジティブコントロール(抗IgE抗体)による刺激により好塩基球が活性化しない健康被験者をコントロールとして、IgEの受動感作の実験を行った。HR(+)患者のIgEを受動感作した場合には、カルボプラチンによる刺激により好塩基球の活性化がみられたが、HR(-)患者のIgEを受動感作した場合には、カルボプラチン刺激による好塩基球の活性化はみられなかった。 カルボプラチンによる過敏症の既往のある(HR+)患者8名と既往のないHR(-)患者5名のFcεRIの発現量を比較した。その結果、好塩基球におけるFcεRIαの発現量は、HR(+)患者ではHR(-)患者および健常被験者に比べ有意に高値であった(それぞれP<0.05, P<0.01)。また、末梢血におけるFcεRIα、FcεRIβ、FcRγのmRNA発現量は、HR(+)患者ではHR(-)患者に比べ有意に高値であった(それぞれP<0.05, P<0.01, P<0.05)。 以上の結果より、カルボプラチンによるアレルギーは、好塩基球や肥満細胞におけるFcεRIの発現量の増加やカルボプラチン特異的IgEが生成されることで、引き起こされることが明らかになった。
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