研究課題/領域番号 |
24590189
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
金 一暁 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10612377)
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研究分担者 |
金崎 啓造 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60589919)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | COMT / 2-methoxyestradiol |
研究概要 |
昨年度までにCOMT不全が高脂肪食のもとにおける耐糖能の悪化と関連することと、それがCOMTの代謝産物である2-methoxyestradiolの投与により 改善することを見出している(研究代表者 金崎啓造 課題番号23790381)。 本年度はその詳細な分子機構を解明する事に努めるとともに、ヒトにおける臨床試験に必要な症例数ならびに実施検査項目などを予測検討して実施するために、院内倫理委員会提出書類を作成した。 COMT不全が妊娠高血圧腎症の病態に関連する事、妊娠高血圧腎症がインスリン抵抗性を惹起する事などより、申請者は高脂肪食のもとCOMT不全により惹起される耐糖能異常はインスリン抵抗性悪化にあると認識しており、脂肪組織、肝臓へのマクロファージ;浸潤など、それを指示する所見も得られている。実際に高脂肪食投与下、2-methoxyestradiol投与により改善する耐糖能は2週間の短期間では血中インスリン濃度上昇によって、さらに10週の長期間ではインスリン抵抗性の改善を伴っている事を見出した。また、インスリン産生beta-細胞ラインであるmin-6細胞を用いて検討したところ、2-methoxyestradiol投与により分泌インスリンは増加していた。 現在、2-methoxyestradiolによるインスリン分泌の更なる詳細な分子機構を解析中であるとともに、臨床試験実施に向けペーパーワークを完了させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はCOMT不全の意義は、インスリン抵抗性にあると考え、研究を立案していた。実際長期間(10週)の高脂肪食投与マウスで生じるインスリン抵抗性悪化は、2-methoxyestradiol投与により改善していた。一方、短期間(2週間)の高脂肪食投与のもとCOMT阻害薬投与を行った結果生じた耐糖能障害は2-methoxyestradiol投与により改善し、インスリン分泌増加を伴っていた。このように2-methoxyestradiolはbi-phasicなインスリン分泌作用を有している事が明らかとなった。これらの結果は当初の予想とは異なっていたが、予想外に興味深い結果となった。これらの結果より得られた知見をもととし、臨床試験に用いる必要症例を推算している。
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今後の研究の推進方策 |
COMT不全の結果生じる2-methoxyestradiol不全が、耐糖能不全に寄与する可能性が示され、ヒトでの意義を確認する。本年度は主に次の2点を重点的に取り組み、早期の論文発表につなげたい。 1) COMT, 2-methoxyestradiol不全によるインスリン分泌調節機構-分子標的の同定:現時点では2-methoxyestradiolによりbeta-細胞においてAMPKの活性化が(以前既に見出している肝臓同様)生じる事を解明しているが、2-MEは構造上ppar-gamma agonistと類似点があり、ppar活性を確認する事、c-junやMaf, PDX-1といったインスリン分泌に関与する因子の同定を行う。 2) マウス解析の結果得られた結果より、COMT阻害薬投与による耐糖能障害発症有無と分子機構を検討する必要症例数を同定し、倫理委員会提出用書類を作成した。今後倫理委員会の許可を得た後に、臨床試験を開始したい。 3) COMT阻害を有する化学物質のスクリーニング:COMT阻害薬のみならず、内因性COMT阻害物質であるホモシステインをはじめ、COMTは様々な分子で作用抑制を受ける。これらの環境因子をスクリーニングして行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)前年度に引き続き動物実験を行うにあたる実験動物の購入ならびに酵素活性や2-methoxyestradiolなどの測定、メタボローム解析、microarray解析などを行うための費用として使用予定。 2)ヒトの臨床試験においてCOMT遺伝子多型を含む遺伝子解析やCOMTの内因性抑制物質ホモシテイン濃度・COMT不全による耐糖能機能検査や代謝異常など測定のための諸検査費用として使用予定。
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