研究課題/領域番号 |
24590193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
黒崎 勇二 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90161786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 局所薬物動態 / 局所利用率 / 筋肉内拡散動態 / 局所冷却 / 局所血流 / 微小透析(マイクロダイアリシス) / 薬物動態 |
研究概要 |
局所作用型ドラッグデリバリーシステム(DDS)の分野では、標的組織における遊離形薬物濃度を長時間高濃度に保ち、かつ非目的部位への薬物送達の指標となる血漿中薬物濃度を低減させ、これらを高度に保証する製剤の開発が望まれている。そのためには、局所投与された薬物の投与局所拡散動態や局所利用率を評価する学術的基盤が不可欠である。 (A) 送達部位からの薬物の拡散・移行・消失過程の解析:本年度の研究では、実験動物(ラット)の腹部筋肉内に局所定速送達した薬物について、薬物送達部位からの距離が異なる部位で微小透析(microdialysis)法により局所遊離形薬物濃度をモニタし、これに基づく局所利用率を定義した。モデル薬物(アンチピリン)の筋肉内遊離形薬物濃度のAUCは、送達用プローブから2 mm の位置では静脈内投与(iv)時と比べ約21倍に、5 mmおよび10 mmの位置ではそれぞれ3.6倍および1.8倍に増大したが、15 mmの位置ではほぼiv時のAUCに等しいことが明らかとなり、遊離形薬物濃度による局所利用率の評価は局所作用型DDSの製剤機能評価に極めて有用と考えられた。 (B) 局所冷却が薬物の局所動態および局所利用率の改善に及ぼす影響:筋肉内局所薬物動態に及ぼす局所冷却の影響を評価した。局所冷却により筋肉表面血流量は約50%に減少し、局所定速送達したアンチピリンの定常状態における局所遊離形濃度のAUCは、非冷却時に比べ2 mm の位置で約13倍に、5 mmおよび10 mmの位置では何れも約5倍に増大したのに対し、血漿中濃度のAUCは約80%に低下した。局所冷却は、全身循環系への薬物移行性の低下だけでなく、薬物送達部位から周辺部位への拡散にも影響し、特に薬物送達部位近傍の局所利用率を向上させ、同時に血漿中薬物利用率を低下させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋肉内に定速送達したモデル薬物(アンチピリン)の送達部位周辺筋肉内への拡散・移行および全身循環系への消失動態に及ぼす局所冷却の効果について微小透析(microdilysis)を応用した局所薬物動態評価系により送達部位からの位置ごとの局所遊離形薬物濃度の経時的変化として連続的にモニタすることができた。 モニタした局所遊離形薬物濃度に基づく局所利用率を定義し、評価することができた。定義した局所利用率いより筋肉内局所薬物動態に及ぼす局所冷却の影響を評価することができた。 得られた位置・時間に関する濃度変化データについて側方拡散過程と全身循環系への消失過程を組み込んだ局所動態モデルを構築し,解析を試みた。 研究成果を「第6回次世代を担う若手医療薬科学シンポジウム(京都市、2012年11月)」にて発表した。 次年度に向けて、微小透析液中のポリ・エチレングリコールの定量方法がほぼ確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
継続して、筋肉内定速送達時の薬物の局所濃度推移を記述するより汎用性が高く高精度の数理モデルの構築を試みる。 実験動物(ラット)を用いて,物性(分子量)の異なるモデル薬物(重合度の異なるオリゴ~ポリ・エチレングリコール)の局所動態を比較し,薬物の物性が局所薬物動態に及ぼす影響について明らかにする。 局所冷却が分子量の異なるエチレングリコール類の局所動態および局所利用率の改善に及ぼす影響について検討する。 別途,in vitroにおける薬物の高分子ゲル中の拡散データを取得し,筋肉内で推定された拡散動態と比較する。 局所血流が局所薬物動態に及ぼす影響についてさらに詳細に検討するために局所冷却温度を段階的に制御し、段階的な限局的血流減少モデル実験系を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
局所冷却温度を段階的に制御するために恒温装置を購入する。局所薬物濃度モニタリングに使用する微小透析プローブ、微小透析装置関連の消耗品、薬物の定量に使用するHPLC装置の分離カラムや移動相溶媒、各種試薬類などの消耗品、薬物のタンパク結合測定用の消耗品、実験動物(ラット)などを購入する。
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