研究課題/領域番号 |
24590193
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
黒崎 勇二 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90161786)
|
キーワード | 局所薬物動態 / 局所利用率 / 筋肉内薬物拡散動態 / 局所冷却 / 微小透析 |
研究概要 |
局所作用型ドラッグデリバリーシステム(DDS)の分野では、標的組織における遊離形薬物濃度を長時間高濃度に保ち、かつ非目的部位への薬物送達の指標となる血漿中薬物濃度を低減させ、これらを高度に保証する製剤の開発が望まれている。そのためには、局所投与された薬物の投与局所拡散動態や局所利用率を評価する学術的基盤が不可欠である。 昨年度の研究により、遊離形薬物濃度による局所利用率の評価は局所作用型DDSの製剤機能評価に極めて有用であることが示唆されたことから、本年度の研究では、局所冷却が薬物の局所利用率の改善および局所動態、特に局所からの消失動態に及ぼす影響について研究を実施し、以下の知見を得た。 実験動物(ラット)の腹部筋肉内に局所定速送達したモデル薬物(アンチピリン)について、薬物送達部位からの距離が異なる部位で微小透析(microdialysis)法による局所遊離形薬物濃度モニタを行い、遊離形薬物濃度に基づく局所利用率を定義し、筋肉内局所薬物動態に及ぼす局所冷却の影響を評価した。 また、微小透析法を応用した局所薬物動態評価として、これまで実質的には定常状態の試料に対してのみ適用可能な手法とされてきたZero-net-flux法の改善法として考案した「同時灌流Zero-net-flux法」のモニタ特性についての速度論的評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋肉内に定速送達したモデル薬物(アンチピリン)の局所利用率に及ぼす局所冷却の効果について、微小透析(microdilysis)を応用した局所薬物動態評価系により局所遊離形薬物濃度の経時的変化として連続的にモニタしたプロファイルから速度論的な評価を行い、薬効に直結すると考えられる局所遊離形薬物濃度に基づいた局所利用率に及ぼす影響として評価することができた。薬物送達中止後の各モニタ部位での局所薬物動態プロファイルから筋肉から全身循環系への薬物移行(消失)動態に関する速度論的パラメータを得、局所からの消失動態に及ぼす冷却の影響を明らかにすることができた。 同時灌流Zero-net-flux法の局所薬物動態評価への応用に関し、その可能性と問題点について明らかにすることができた。 モデル化合物として使用を予定している重合度の異なるエチレングリコールの重合体について、微小透析液中濃度測定(HPLC:示差屈折率検出器)に関する予備的な評価を終えた。
|
今後の研究の推進方策 |
薬物の物性が局所薬物動態および局所からの消失動態に及ぼす影響について明らかにする。さらに、局所冷却がこれら物性の異なるモデル薬物の局所動態および局所利用率の改善に及ぼす影響について検討する。 透析プローブへの吸着による透析プロファイルの時間遅れを補正する数理解析モデルについて検討する。 本研究で得られたこれまでの知見を取り纏め、関連学会で発表する。さらに、専門学術雑誌に英語論文として投稿する。
|