研究実績の概要 |
局所作用型ドラッグデリバリーシステム(DDS)の分野では、標的組織における遊離形薬物濃度を長時間高濃度に保ち、かつ非目的部位への薬物送達の指標となる血漿中薬物濃度を低減させ、これらを高度に保証する製剤の開発が望まれている。そのためには、局所投与された薬物の投与局所拡散動態や局所利用率を評価する学術的基盤が不可欠である。 本研究課題では、 (A)~(C)の項目について検討し、以下の知見を得た。(A) 送達部位からの薬物の拡散・移行・消失過程の解析:遊離形薬物濃度による局所利用率の評価は局所作用型DDSの製剤機能評価に極めて有用と考えられることから、ラットの腹部筋肉内に局所定速送達したモデル薬物について、微小透析(microdialysis, MD)法により薬物送達部位からの距離が異なる部位での局所遊離形薬物濃度推移をモニタし、これに基づく局所利用率を定義した。(B) 局所冷却が薬物の局所動態および局所利用率の改善に及ぼす影響:局所冷却は、全身循環系への薬物移行性の低下だけでなく、薬物送達部位から周辺部位への拡散にも影響し、特に薬物送達部位近傍の局所利用率を向上させ、同時に血漿中薬物利用率を低下させること、さらに、局所からの消失動態にも影響することを明らかとした。(C)微小透析(MD)法におけるモニタの時間遅れの補正法の考案:MD用チューブへの吸着動態を補正関数とし、コンボリューション法によりモニタ時間遅れを補正する手法を考案し、モニタ解析精度を大幅に改善することに成功した。
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