研究課題/領域番号 |
24590194
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大河原 賢一 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30291470)
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研究分担者 |
檜垣 和孝 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60284080)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | がん治療 / 抗がん剤 / 血管正常化 / リポソーム / エマルション / 抗腫瘍効果 / 局所動態 |
研究実績の概要 |
腫瘍組織内の新生血管は構造的・機能的に不完全であり、且つその分布には偏りがある為、腫瘍組織内の血流は不均一であることが知られている。近年、血管内皮増殖因子 (VEGF) を阻害することにより薬剤の腫瘍内移行を改善する方法 (血管正常化説) が提唱されている。そこで我々は、抗がん剤パクリタキセル内封リポソーム製剤(PL-PTX)の抗腫瘍効果に及ぼす血管新生阻害剤 SU5416 (VEGF 2 型受容体のチロシンキナーゼ阻害剤) の併用効果を検討した。SU5416 は、当研究室で既に調製に成功している PEG 修飾 O/W 型エマルション (PE-SU5416) として投与し、PL-PTX の C26 結腸がんモデルマウスにおける抗腫瘍効果に対する影響を評価した。その結果、両製剤を併用することで、腫瘍増殖抑制効果の増強が認められた。そこで次に、両製剤による併用効果の発現メカニズムの解明を試み、種々検討を行った。その結果、PE-SU5416 を前投与することで、壁細胞被覆を伴う血管の増加といった、血管構造の改善に伴って、血管の物質運搬機能が向上することが示された。更に、これら腫瘍内血管の構造的・機能的な改善が、その後に投与する PL-PTX の腫瘍内中心部への分布性を増大させた結果、in vivo 抗腫瘍効果の増強へと繋がったことが推察された。
以上、本研究により得られた知見は、臨床成績の更なる向上が求められているがん治療において、抗がん剤と血管新生阻害剤の併用による最適ながん化学療法の確立を図る上で、非常に有益な基礎的情報を提供すると共に、臨床現場にて用いられている抗がん剤の体内動態を適切に制御することにより、安全、且つ有効ながん治療に大きく貢献可能であることを示すものである。
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