研究課題/領域番号 |
24590195
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
湯元 良子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 助教 (70379915)
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キーワード | 薬学 / 薬剤性肺障害 / 肺胞上皮細胞 / II型ーI型分化転換 / 上皮間葉転換 |
研究概要 |
薬物による肺障害、特に肺線維症や間質性肺炎は極めて重篤な障害であり時に致死的である。しかしその発現機構には不明な点が多く、また新規医薬品の肺障害性の有無を事前に予測するシステムは存在しない。本研究では、薬物の肺障害性および肺障害とII型-I型分化転換あるいは上皮間葉転換 (Epithelial Mesenchymal Transition : EMT)との関係性について明らかにし、肺線維化などの薬物性肺障害のin vitro予測システムを開発することを目的としている。 前年度までにブレオマイシン処置したラット肺胞上皮II型細胞由来の株化細胞RLE-6TNにおいて、EMTを示唆する細胞形態の変化(上皮細胞様の形態から線維芽細胞様の形態に変化)や上皮系マーカー遺伝子の減少、間葉系マーカー遺伝子の上昇が認められることを明らかにしてきた。 本年度は、主にメトトレキサートを用い同様の検討を行った結果、以下の知見が得られた。 1)RLE-6TNをメトトレキサート(0.03, 0.1 microM)で144時間 (day 1~day 6)処置したところ、ブレオマイシンと同様にEMTを示唆する細胞形態の変化やアクチンファイバーのリモデリングが観察された。2)また上皮系マーカーであるCytokeratin 19 (CK19)、Tight junction protein ZO-1のmRNA発現が有意に減少し、間葉系マーカーであるFibronectin (FN)、Vimentin (VIM)のmRNA発現が有意に増加した。3)一方、ゲフィチニブ を3, 10 microMの濃度で 144時間処置した場合には、共焦点レーザー顕微鏡観察により部分的な形態変化を認めたものの大きな変化は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メトトレキサート処置においてもブレオマイシン処置とほぼ同様な結果が得られたことからRLE-6TN細胞は薬剤によるEMT誘発の解析・肺障害予測に有用なモデル細胞系である可能性が強く示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト肺がん由来A549細胞を用い、ラット由来RLE-6TN細胞の場合と同様にTGF-beta1, ブレオマイシン、メトトレキサートで処置し、共焦点レーザー顕微鏡による形態観察を行う。また遺伝子発現解析により、RLE-6TN細胞で変動が認められた上皮系マーカーであるCK19、ZO-1および間葉系マーカーであるFN、VIMのmRNA発現解析を行う予定である。あわせて、初代培養細胞のII型‐I型分化転換過程に対する各種薬物の影響についても検討を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、主にラット肺胞上皮II型細胞由来の株化細胞RLE-6TNを用いた検討を行った。ラット肺から単離精製した初代培養細胞を用いた研究は次年度に行う予定としたため次年度使用額が発生した。 初代培養細胞のII型‐I型分化転換過程に対する各種薬物の影響についても検討を進めるため、実験動物の購入費及び初代培養細胞の単離・調製・培養用試薬等の購入費に当てる予定である。
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