セラミド代謝酵素の一つであり、セラミドをグルコシル化することでそのアポトーシス誘導能を不活化することが知られているGlucosylceramide synthase (GCS)の発現レベルが、PI3-kinase/Akt経路の活性化レベルの高いがん細胞で亢進していることを見出した。 以前より、我々は上記の様ながん細胞において、PI3-kinase/Akt経路の特異的な遮断剤(LY294002やAKT1/2-inhibitor)を併用することによって、いくつかの抗がん剤の感受性を亢進させ、顕著なアポトーシスを誘導させることを明らかにしてきた。そこで、本年度の研究では、セラミド代謝経路、PI3-kinase/Akt経路、抗がん剤に対するがん細胞の感受性との関連について解析をすすめ、以下の様な知見を得た。1)PI3-kinase/Akt経路の活性化レベル、GCSの発現レベルの高いがん細胞では、LY294002やAKT1/2-inhibitorを併用することで、ドキソルビシン(DXR)による細胞死誘導効果を増強できる。それと同様の効果が、GCS阻害剤の併用や、siRNAによるGCSの発現抑制によっても見られた。2)LY294002やAKT1/2-inhibitorによって、がん細胞のGCS mRNAの発現が抑制され、その酵素活性が低下することを明らかにした。3)以上のことから、PI3-kinase/Akt経路の活性化レベルの高いがん細胞では、その下流の一つにセラミド代謝酵素GCSがあり、その発現、活性レベルを高くすることで、抗がん剤(DXR)感受性を低下させている可能性を見出した。即ち、PI3-kinase/Akt経路よりもGCSが、より有効な“がん分子標的”であることが示唆された。
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