研究課題
前年度は、脾臓・樹状細胞標的型ベクターを利用したメラノーマナノワクチンの開発に成功した。本年度はこのベクターを利用したマラリアナノワクチンの開発を試みた。マラリアDNAワクチンとして、マウスマラリア原虫P yoelii GPI8p transamidase-related proteinをコードしたpVR1020-TAM (pyTAM)を用いた。pyTAMとpolyethyleneimine (PEI)、およびγ-polyglutamic acid (γ-PGA)を最適な混合比で静電的に自己組織化させ、安定なナノワクチン(pyTAM-PEI-γ-PGA複合体)を構築した。pyTAM-PEI-γ-PGA複合体によるマラリア感染の抑制効果について検討した。マウスにPBS (control)、何もコードしていないプラスミド(pVR1020)を内包した複合体(pVR1020-PEI-γ-PGA複合体)あるいはpyTAM-PEI-γ-PGA複合体を2週間おきに3回腹腔内投与して免疫誘導を行った。最終免疫から2週間後に1×106のP. yoelii 17XL-parasitized red blood cells (pRBCs)を腹腔内投与し、寄生虫血および生存を経日的に観察した。その結果、pVR1020-PEI-γ-PGA複合体を投与したマウスではcontrolと同様に寄生虫血が増加し、全てのマウスが死亡した。これに対し、pyTAM-PEI-γ-PGA複合体を投与したマウスでは、寄生虫血の一時的な増加が見られたものの、すぐに消失し、全マウスが生存した。免疫誘導効果を評価するために、最終免疫から2週間後の血清中抗原特異的IgGおよびIgGサブタイプを測定した。その結果、pyTAM-PEI-γ-PGA複合体では、総IgG値、IgG1値、IgG2a値、およびIgG2b値の有意な上昇が認められた。したがって、本ベクターを利用した新規マラリアDNAナノワクチンは、マラリアに特異的な免疫誘導を惹起し、マラリア感染による死亡および寄生虫血の増加を著しく抑制できることが示唆された。以上のように、我々は本年度の研究によって、脾臓・樹状細胞標的型ベクターを利用したマラリアナノワクチンの開発に成功した。
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