研究課題/領域番号 |
24590199
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 恵嘉 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30508643)
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キーワード | HIV / AIDS / 抗HIV療法 / 薬剤耐性 / 耐性誘導 / 臨床分離株 |
研究概要 |
昨年度、インテグラーゼ阻害剤 ラルテグラビル (RAL) および CCR5阻害剤 マラビロック (MVC) の組み合わせに関する新たな知見を報告したが(Journal of General Virology, 2013)、本年度は、それらに加えて、MVCに対して高度耐性を付与するEnv領域のアミノ酸変異が、各種抗Env中和抗体に対していずれも高度感受性をもたらすことを明らかにした(in revision, 2014)。この成果は、本研究目的で記述した、一方の抗HIV剤に対する耐性変異が、他方の抗HIV剤(中和抗体)の感受性に寄与する新たな組み合わせの拡充に繋がると期待される。また昨年度、試験的に開始したRALおよびMVCの組み合わせによる「多剤in vitro耐性誘導」法の確立を本年度は引き続き行った。具体的には、昨年度に行ったRALまたはMVCの単剤によるin vitro耐性誘導の結果をもとに、(i) RAL濃度は一定、MVC濃度は漸次増量、(ii) MVC濃度は一定、RAL濃度を漸次増量、(iii) RALおよびMVCのIC50濃度を基準に各々1.5-2.0倍ずつ漸次増量、の3通りの方法で進めている。In vitro耐性誘導は1パッセージに7日程要すること、かつ、各臨床分離株において耐性獲得速度に差が生じるため、現在も各パッセージウイルスのシークエンス解析を継続中であるが、同定した各アミノ酸変異を有するリコンビナントウイルスを作製し、ウイルス学的解析を逐次進めている。 さらに、本年度のMVC耐性株における中和抗体感受性に関する結果をふまえ、MVCと抗Env中和抗体を用いた「多剤in vitro耐性誘導」法を野生株または耐性株の各々の組み合わせにより開始したところである。 また、リアルタイムウイルスライブラリーの拡充に関しては、昨年同様に逐次進めることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「多剤in vitro耐性誘導システム」の確立に関しては、「研究実績の概要」でも示した通り、用いた抗HIV剤 (MVC) に対する耐性変異に対する、別の抗HIV剤(抗Env中和抗体)に対する各パラメーターの解析を行い、その成果の一部を本年度中に学術雑誌に投稿することが出来た(in revision, 2014)。さらに、「本年度の研究実施計画」で予定していたRALとMVCを同時に加えた多剤in vitro耐性誘導を3通りの方法で解析中であること、および、新たな組み合わせとしてMVCと抗Env中和抗体を用いた「多剤in vitro耐性誘導」法を野生株または耐性株の各々の組み合わせにより開始できたことも含め、ほぼ当初の計画通りに進んでいる。 各種サブタイプのR5-、X4-、およびX4/R5混在-臨床ウイルスの分離および解析に関しては、昨年同様に、逐次新たなウイルスを確保および解析が出来たことから、同じく、ほぼ当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、現在進めているRAL+MVC、およびMVC+抗Env中和抗体の各組み合わせによる「多剤in vitro耐性誘導システム」で得られた各パッセージウイルスの分子生物学的およびウイルス学的解析を大幅に進めるとともに、他の薬剤同士または中和抗体等の組み合わせも逐次開始し、システム構築のデータを蓄積して、ウイルス学的・治療学的にも新たな知見を見出すことを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
推進方策においても示したが、次年度は、使用する臨床分離株および抗HIV剤の数を増やし、多剤in vitro耐性誘導を多元的に行っていく予定であり、かつ、シークエンスを含めた解析サンプルの大幅な増加を予定しているため、本年度よりも消耗品の使用を考慮して、本年度の研究費の一部を次年度に使用することにした。内訳としては殆どが消耗品費の予定である。 次年度上半期は、本年度に回収した各サンプルを、シークエンスを含めた各種解析を中心に行うため、それらに必要な試薬および消耗品に使用する予定である。同じく次年度上半期は「多剤耐性誘導」も大幅に行うため、それらに必要な試薬および消耗品に使用する予定である。他方、次年度下半期は、次年度上半期に開始して得られた各サンプルを、シークエンスを含めた各種解析を中心に行うため、それらに必要な試薬および消耗品に使用する予定である。
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