研究課題/領域番号 |
24590200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
尾上 誠良 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (00457912)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペプチド創薬 / ペプチド創剤 / 薬物動態制御 |
研究概要 |
本研究は,患者数の爆発的増加が予想されているものの未だ対処療法しか提示されていない慢性閉塞性肺疾患と肺繊維症に対して有効かつ安全な治療法の戦略的開発を目指すものである.すなわち,気管支拡張作用と強力な抗炎症・抗アポトーシス活性を有する抗炎症性ペプチド誘導体を糖鎖修飾アミノ酸やポリエチレングリコールを用いて戦略的に開発し,それを含有した徐放性かつ長時間肺滞留型吸入製剤を新規に設計し,慢性閉塞性肺疾患・肺繊維症モデル動物に投与して効果を検証する.本検討によって「気道炎症改善」「肺繊維化抑制」「気管支拡張」の 3 者を同時に達成することにより,新概念の治療薬創出に寄与しようとするものである.【平成 24 年度】は (1) 生理活性ペプチド誘導体の化学合成と物理化学・生物化学的評価,(2) 実験的 COPD モデル動物作製ならびにバイオマーカーによるバリデーションに注力して,すなわち望ましい治療効果が期待できるシーズの探索を行うと共に,in vivo 評価の為のツールとしてモデル動物を提示した.特に新規に開発した粉末製剤技術をブレオマイシンに応用することによって,ブレオマイシン誘発性肺線維症モデル動物を簡便に調製することが可能となり,バイオマーカー評価においても本モデル動物が肺線維症モデル動物であることを強く示唆するデータを得ることが出来た.また,生理活性ペプチドにポリエチレングリコールを化学修飾することによって肺内での代謝安定性を飛躍的に向上することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.固相ペプチド合成技術による新規機能性ペプチド創製 既に応募者が見出した glucagon-secretin family peptides 構造活性相関情報に基づき,(a)特定されたアミノ酸の置換あるいは糖鎖アミノ酸を導入した種々のペプチドをデザインし,固相合成法によって化学合成し,さらには (b) 高活性ペプチド誘導体の活性に影響が出ない部位にポリエチレングリコールを結合させた安定化誘導体もあわせて化学合成した. 2.各種物性・活性評価ならびに高機能性ペプチドの選択 合成されたペプチドについて L2 細胞を用いた cAMP 産生作用ならびに受容体結合活性を ELISA 法と放射性リガンドを用いる受容体結合測定法により定量し,さらに細胞内カスパーゼ活性を指標とした抗アポトーシス機能についても評価して有用性を比較検討した.さらに円二色性スペクトルやフーリエ変換型赤外分光光度計等を用いて高次構造を評価し,更なる構造活性相関情報を探り,本情報を反映させた新規機能性ペプチドのデザイン・化学合成を試みた. 3.実験的肺繊維症・COPD モデル動物の構築ならびにバイオマーカーの探索 (I) COPD において確認される肺組織繊維化を再現するため新規ブレオマイシン粉末吸入製剤による肺線維症モデル動物を作製し,血中の炎症・アポトーシス関連バイオマーカー(LDH,単核球由来ペルオキシダーゼ,カスパーゼ,活性酸素種,8-OHdG)を LC/MS, ELISA, その他各種生化学的手法を用いて検証した.
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今後の研究の推進方策 |
1.実験的肺繊維症・COPD モデル動物の構築ならびにバイオマーカーの探索(II) 【平成 24 年度】に開発された実験的肺繊維症・COPD モデル動物を対象とし,肺組織を摘出しアポトーシスならびに炎症関連物質の発現について RT-PCR 法,免疫組織化学的手法を用いて COPD 様の病態形成が誘導されていることを確認する.さらに,肺の病理切片についてアポトーシス検出のために TUNEL 染色を実施し,他のモデル動物との相違点を明確にし,本モデルの有用性を網羅的に精査する. 2.新規機能性ペプチドを用いた吸入製剤の開発 【平成 24 年度】に合成された新規誘導体を,ペプチド製剤用粉末吸入製剤システムに適用して気道内投与用の製剤を得る.作用持続の観点から PLGA ナノスフェアを作成し,なおかつ表面をポリアルギニンでコートすることによって肺粘膜付着性を付与する.得られた粉末をキャリアー型の粉末吸入製剤へと応用し,持続的薬効発現に寄与できる有効な投与形態の提示を行う.作製した製剤についてはレーザー回折法,粒度評価,カスケードインパクターによる in vitro 動態予測を行い,粉体の吸入特性について各種精査すると共に,その物理化学的安定性についても併せて試験することとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成 25 年度は主にペプチド性粉末吸入製剤を試作して,各種物性評価と処方の最適化を行い,その後にモデル動物を用いて効果を精査することとする.従って,平成 25 年度の研究費は主として動物実験に使用する動物,製剤試作費ならびにバイオマーカー評価の試薬代に充てることとなる.
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