研究課題/領域番号 |
24590200
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
尾上 誠良 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00457912)
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キーワード | COPD / 血管作動性腸管ペプチド / 粉末吸入剤 / 抗炎症 / 肺疾患 |
研究概要 |
応募者らは先に血管作動性腸管ペプチドが COPD に有効である可能性を提示しており,本ペプチドを医薬応用するには生体内安定性の改善と選択的薬物送達法が必須であろう.そこで糖鎖導入アミノ酸やポリエチレングリコールを効果的に分子内に導入することによって高安定性・高機能性 VIP 誘導体開発を行い,これら誘導体の物理化学的特性(安定性,高次構造)やラット肺胞由来 L2 細胞を用いた受容体結合・抗アポトーシス活性を指標に,もっとも治療効果が期待できる誘導体を選定した.これと同時に,進行が進んだ COPD の病態を強く反映した実験的モデル動物作製を目指して,ブレオマイシン吸入製剤による実験的肺繊維症・COPD モデル動物の構築を試みる.第 2 段階として,選定された新規機能性ペプチドを応募者が開発する新規粉末吸入製剤技術,特に長時間にわたって肺局所に滞留し持続的曝露を実現できる製剤を高塩基性アミノ酸重合体と生分解性ポリマーを用いて設計し,本品の薬物動態学的挙動を効果・安全性の面から精査した.そして,実験的肺繊維症・COPD モデル動物を用いて,新規機能性ペプチドの抗炎症作用,抗アポトーシス作用及び肺繊維化抑制機能を示す有効投与量を in vivo 条件下で検証し,すなわち臨床現場で実用可能な製剤処方を提示した.新規機能性ペプチドの作用機構についても,応募者がこれまでに積み上げてきた各種バイオマーカー評価技術,特に酸化ストレス及びアポトーシス関連物質挙動モニタリング技術によって網羅的に解析し,本研究によって開発される新規ペプチド製剤の効果を検証することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに計画した研究内容にそっては以下の通り遂行した.すなわち「固相ペプチド合成技術による新規機能性ペプチド創製」では既に応募者が見出した glucagon-secretin family peptides 構造活性相関情報に基づき,(a)特定されたアミノ酸の置換あるいは糖鎖アミノ酸を導入した種々のペプチドをデザインし,固相合成法によって化学合成し,さらには (b) 高活性ペプチド誘導体の活性に影響が出ない部位にポリエチレングリコールを結合させた安定化誘導体もあわせて化学合成した.さらに得られた誘導体について「各種物性・活性評価ならびに高機能性ペプチドの選択」を実施し,合成されたペプチドについて L2 細胞を用いた cAMP 産生作用ならびに受容体結合活性を ELISA 法と放射性リガンドを用いる受容体結合測定法により定量し,さらに細胞内カスパーゼ活性を指標とした抗アポトーシス機能についても評価して有用性を比較検討した.さらに円二色性スペクトルやフーリエ変換型赤外分光光度計等を用いて高次構造を評価し,更なる構造活性相関情報を探り,本情報を反映させた新規機能性ペプチドのデザイン・化学合成を試みた.さらに「実験的肺繊維症・COPD モデル動物の構築ならびにバイオマーカーの探索」を行い,COPD において確認される肺組織繊維化を再現するため新規ブレオマイシン粉末吸入製剤による肺線維症モデル動物を作製し,血中の炎症・アポトーシス関連バイオマーカー(LDH,単核球由来ペルオキシダーゼ,カスパーゼ,活性酸素種,8-OHdG)を LC/MS, ELISA, その他各種生化学的手法を用いて検証した.これらの成果を得た上で,新規誘導体の新製剤設計を行い,病態モデル動物に投与することでその効果について検証を進めているところである.以上の研究成果から,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
1.実験的肺繊維症・COPD モデル動物における新規機能性ペプチド吸入製剤の生理活性・体内動態検証 【平成 25 年度】に作製した新規機能性ペプチド吸入製剤を気道内投与用実験器具を用いて,【平成 24年度】に作製した実験的 COPD モデル動物に投与し,炎症・アポトーシス関連各種血中バイオマーカーの変動ならびに肺組織形態変化を指標として,合成した新規誘導体の効果を評価し,新規機能性ペプチドによる COPD 治療の可能性を網羅的に調査する.また,血中ペプチド濃度も LC/MS/MS にて定量し,薬理データと併せて考慮して投与量の最適化を行うこととする.
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験モデルの再現性に問題が出たため,実験精度を向上させる検討に時間を要した.そのため,本来行うはずであった動物実験数が少なくなり,不測データ分は次年度に行ってデータ収集することとした. 疾患モデル動物を作成し,それを用いた動物実験ならびにバイオマーカー探索に用いることとする.
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