研究課題/領域番号 |
24590202
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
井上 勝央 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50315892)
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研究分担者 |
湯浅 博昭 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20191471)
太田 欣哉 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90448704)
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キーワード | トランスポーター / ENBT1 / 核酸塩基 / プリン核酸 |
研究概要 |
本年度は、ENBT1の基質特異性に関する輸送特性について、より詳細な検討を行った。ENBT1を一過性発現させた細胞におけるプリン核酸塩基の細胞内取り込みについて速度論的解析を行ったところ、adenine、guanine及びhypoxanthineに対するKm値はそれぞれ約1μMと算出された。一方、adenine輸送に対するそれぞれのプリン核酸塩基のIC50値は約10~400μMであり、輸送解析により得られたKm値と大きく異なることが示された。この要因を探るため、ENBT1の輸送機能におけるプリン核酸塩基のsalvage経路の関与の可能性について検討した。プリン塩基のsalvage酵素(APRT、HPRT)を欠損する細胞株を用いてENBT1によるadenine輸送能を検討した結果、その有意な取り込みは認められないものの、外因性のAPRTを一過性発現することにより、adenineの細胞内への取り込みが認められた。さらに、ENBT1を発現しているHela細胞におけるプリン核酸塩基の取り込みは、そのsalvage酵素に対するRNAiにより顕著に低下することが明らかとなった。これらの結果より、低い見かけのKm値はsalvage経路の核酸代謝酵素に対するものであり、IC50として得られた値がhENBT1に対する真の親和性を表わすことが示唆された。したがって、ENBT1を介したプリン核酸塩基の輸送は細胞内のsalvage酵素により協奏的に制御されていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の仮説の主要な部分となる「輸送機構と代謝酵素とのクロストーク」に関して、分子レベルでの実証に成功し、本申請課題の着眼点及びその展開方向の妥当性を示すことができた。また、新規核酸塩基トランスポーターの同定と輸送機能の解析に関して、投稿論文を作成するための基礎的な情報収集を完了したので、予定通り、論文発表もできるものと考えている。したがって、本研究課題の基盤となる研究成果が得られていることより、総合的に研究計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
核酸塩基の細胞内取り込みにおける細胞内代謝酵素の影響について、申請した研究計画に従って研究を進めていく予定であるが、今後、臓器レベルで解析を行うとともに、核酸塩基やその類似薬などの体内動態の分子レベルでの理解や薬物送達への新たな展開の可能性も考慮しながら、柔軟な研究計画により研究を推進していく予定である。
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