本研究の目的は遺伝子組換えビフィズス菌を用いてEGFR(上皮成長因子受容体)陽性がんに対する新規な治療法を確立することである。ビフィズス菌は、静脈内に投与した場合、非常に高い選択性をもって腫瘍でのみ増殖する。これまでに、in vivoで、ビフィズス菌に抗EGFR抗体/緑膿菌外毒素A融合蛋白質を分泌させることによりEGFR陽性移植がん細胞(皮膚がん、乳がん)に対し抗腫瘍活性が現れこと、および、IVIS(in vivo imaging system)を用いて、マウスが生きた状態でのビフィズス菌の腫瘍蓄積性を見出した。また、in vitroで抗EGFR抗体/緑膿菌外毒素A融合蛋白質のビフィズス菌での分泌を確認し、大腸菌で作製した抗EGFR抗体/緑膿菌外毒素A融合蛋白質を用いてEGFRとの結合を見出し、種々のがん細胞の細胞増殖阻害活性を見出している。 本研究の今後の臨床応用を考慮した場合、現在のMRS培地を用いた対数増殖期のビフィズス菌の培養液を遠心分離器を用いて精製する方法は、 1.MRS培地中の動物由来成分(肉エキス)に由来する安全性の問題 2.臨床現場において遠心分離器を用いて精製することの困難性の問題3.遠心分離器を用いて精製する際の精製サンプルの品質の安定性の問題 以上の3点の製剤上の問題点がある。本年度はこれらの3点の製剤上の問題を解決する研究を実施し、ほぼ解決できる方法を開発できた。
|