研究課題/領域番号 |
24590211
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
村山 典惠 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90219949)
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研究分担者 |
山崎 浩史 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (30191274)
清水 万紀子 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90307075)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | P4503A4*22 / アレル頻度 / 抗うつ薬 / アルツハイマー治療薬 / HPLC / P4502D6 |
研究概要 |
現在うつ病およびアルツハイマー病を含む神経変性疾患の増加傾向が認められている。治療に際しては各種作用機序の異なる薬物が処方されているが、代謝酵素の遺伝的多型により生体内運命が変動し、想定外の副作用を誘発する例が報告されている。今回の研究では、頻用されている向精神薬について日本人を対象にした薬物体内動態と治療効果に関わる遺伝的要因について臨床検体を用いた検索を行う。 本年度は、多くのうつ病治療薬の代謝にP4502D6と共に関与しているP4503A4に関して、近年報告されたイントロン変異を有する3A4*22の日本人におけるアレル頻度について検討を行った。その結果、今回検討した日本人検体に関して3A4*22は認められなかったことから、3A4*22遺伝子変異発現に関しては人種差が存在する可能性が強く示唆された。さらに、遺伝子多型を判定した白人肝ミクロゾームを用いて、この変異によるP4503A4酵素活性への影響に関して検討を行った。P4503A4の指標活性としてミダゾラム水酸化、デキストロメトルファンN-脱メチル化およびテストステロン6水酸化に関して検討を行った結果、いずれの活性においても野生型肝ミクロゾームに比べて3A4*22遺伝子変異を有する場合において著しい活性の低下が認められた。この要因として、P4503A4特異抗体を用いた免疫化学定量法により、3A4*22変異を有する肝ではP4503A4酵素含量の低下が認められたことから、3A4*22変異は酵素タンパク発現が低下することにより活性低下を引き起こすことを初めて明らかにした。また、国内でアルツハイマー病およびうつ病治療に繁用されている薬物に関して、併用投与を想定したHPLCを用いた簡便な複数薬物の同時分析法について検討を行った。その結果、9種薬物の混在するサンプルの同時分析が可能となる条件をほぼ確立するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回研究対象として取り上げている抗精神薬やアルツハイマー治療薬について、体内での代謝に関しては複数酵素の関与が報告されている。今回特にヒト肝で医薬品代謝に重要であるP4503A4の*22変異に関して日本人における発現頻度と多型の影響を確認できたことは、今後の研究関して有用な情報を得ることが出来た。また臨床検体に関して、複数薬物の同時分析法を検討したことで、検体供与時に速やかに血漿中濃度を測定することが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体を扱うのに必要な倫理審査も終了したことから、インフォームドコンセプトを取得した検体の提供が予定されている。確立した分析法を用いた血漿中薬物濃度の測定およびゲノム遺伝子解析を行い、特に対象としているP4502D6の遺伝子変異と血漿中濃度との関連性について検討を行っていく。また、アルツハイマー病に関してその要因の1つに脳内の薬物代謝酵素による活性代謝物の生成や解毒の影響が示唆されていることから、in vitro実験により詳細な検討を行っていく。また、これら病態のモデル動物作成の検討のため、特に今後繁用が期待されるマーモセットについての薬物代謝酵素活性の特徴に関して検討を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床検体の薬物血漿中濃度の分析を行うために、サンプルの前処理に必要な消耗品を準備する。また、投与薬物の代謝に関与している肝薬物代謝酵素について遺伝子の多型判定を行うために、ゲノムDNA抽出キット、PCRによる増幅に必要な酵素とプライマー、及びRFLP法に必要である制限酵素などの消耗品の準備を進める。代謝酵素欠損による薬物動態ならびに、病態の要因に関して検討を行うために、ヒト由来培養細胞系を用いた実験系についても準備を行うため、各種細胞株の購入、培地及び添加物を準備していく。24年度の実験実施出使用した試薬が一部国外からの輸入品であり、レートの変動により予定価格に差が生じた結果、残額が発生した。次年度については、残額を含めて新たに分析することを計画しているアルツハイマー治療薬、抗精神薬と一部その代謝物の購入を予定している。
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