研究課題/領域番号 |
24590212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
藤井 まき子 昭和薬科大学, 薬学部, 准教授 (50199296)
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研究分担者 |
渡辺 善照 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (70175131)
小泉 直也 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (80433845)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ粒子 |
研究概要 |
24年度の実験計画として,モデル抗原として卵白アルブミン(OVA)を用い,ナノ粒子の設計と適用方法の確立を並行して検討を行った。 ナノ粒子の設計として,固体のナノ粒子を芯物質とし,それに抗原などを吸着させる方法と,高分子やリン脂質を用いたナノ粒子に抗原を封入する方法を検討した。前者については,凝集している酸化チタン(35nm)を安定に分散させ,OVAを吸着させる方法として,塩濃度やpHの調整,高分子による保護コロイド作用について検討を行った。その結果,高圧ホモジナイザーを用いた湿式粉砕と,OVAを保護コロイドとして用いる方法で良好なナノ粒子が得られた。また,他の高分子を用いることによっても良好な分散が得られ,これに水溶性蛍光物質FITC標識デキストラン40000(FD-40)を保持することにも成功した。 次に適用時の皮膚移行について,FD-40を保持させた酸化チタンをヒトに近い表面構造を持つYMP皮膚に適用し,共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。その結果,FD-40水溶液を適用するよりも,毛包付近や角層内への移行が見られ,特に油性基剤に配合することにより移行が高まることが定性的に示された。 一方,OVAを酸化チタンに吸着させると,タンパク変性に伴い抗原性がなくなる可能性がある。そこで,OVA溶液とナノ粒子化したOVAをヘアレスマウスに皮下注射し,IgE誘導能を確認したところ,溶液ではIgE抗体価上昇に2~3回の適用が必要であったが,ナノ粒子では1回適用後でも抗体価の上昇が認められ,抗原性が保持されていること,また,感作性が高まることが示唆された。 一方,W/O型乳剤に基づくナノ粒子化については,高分子を用いたナノ粒子作成の検討を行ったが,粒子径が大きかったり,安定性が悪かったりで,製剤の調製ができなかった。これについては今後さらなる処方及び調製方法の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子の調製に関しては,固体ナノ粒子を新物質として用いる方法に関しては,ナノ酸化チタンを用いることにより,抗原性を保ったままOVAを吸着させることに成功し,皮下注射で交代の上昇を確認できた。また,視覚的に皮膚への移行を観察する方法についても,FD-40を用いることで可能となった。この点においては計画通りの進展があり,さらに,皮膚適用においても3回適用で抗体価の上昇がみられるという予備的検討結果が得られている。一方,W/O型ナノ粒子の調製については,高分子を用いた検討を行ったが,有益な製剤が得られておらず,これに関してはリン脂質を用いた製剤など,引き続き検討が必要である。 スクリーニング的に研究を進めてきたため,データの堅牢性がとれておらず,学会発表には至らなかったが,全般的にみると,可能性のある製剤が得られており,初年度の目標はほぼ達成できたと考える
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今後の研究の推進方策 |
24年度に調製できた酸化チタンナノ粒子を芯物質としたナノ粒子の処方の最適化を図っていく。併用する高分子により,分散性の変化,皮膚移行性の変化が予測されるため,アニオン性,カチオン性,および非イオン性の高分子を併用することにより,OVAの抗原性がどのように変化するかを皮下投与,皮膚への塗布で比較検討する。血清中IgG, IgE濃度の測定とともに,脾臓細胞培養により,どのような免疫系に作用しているのか詳細に検討を進める。また,芯物質として用いる酸化チタンの粒子径,表面状態を変え,さらに有効性を高められないか検討を行う。 W/O型乳剤に関しては,乳化剤を高分子からリン脂質系に変更し,いわゆるマイクロエマルションとなるような処方を検討する。FD-40の配合は問題ないと考えられるが,タンパクは共存物質により変性する可能性があるためこの点についても検討を進める
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は実際にマウスに投与することによる抗体価の変化を測定が中心となるため,動物および抗体測定キットなどの消耗品が中心となる。また,さらに実用的な製剤を検討するため,たんぱくを吸着させたナノ粒子の乾燥を試みるため,真空ポンプの購入も予定している。 研究成果の発表は年度内にまず学会発表を行う。そのための出張旅費を計上する。
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