ワクチン投与は感染症を防ぐために重要であるが,現在はほとんどが筋肉内または皮下注射により投与される。そこで,最適なナノ粒子を設計し,毛包をターゲットとした経皮ワクチン製剤の開発を試みた。 ナノ粒子の処方の最適化を図った。酸化チタンは,表面無処理の粒子径15nmのものを水に分散させ,凝集した粗大2次粒子を除去したのち,OVAを添加した。これを皮下投与したところ,OVAのみ投与したときよりもIgG上昇がみられたため,製剤としての有用性は確保できた。 一方,適用時に行う脱毛処理の影響をランゲルハンス細胞(LC)の活性化とナノ粒子の毛包移行性の2点から検討した。LC活性化はMHC classⅡの発現を指標とした。脱毛後1時間で上昇し,1日後でも上昇が維持されたが,1週間後には元のレベルに戻った。ナノ粒子の毛包への移行はOVAの代わりに蛍光物質FD40を用いて行った。脱毛直後に酸化チタンとともに適用すると毛包深部に分布が見られたが,脱毛1日後には深部への移行は見られず,毛包開口部付近にとどまった。脱毛により生じた空隙がin vivoにおいては治癒により開口部が閉じ,移行が正常皮膚と同等となることが示された。 そこで,ヘアレスマウスの頭部付近をシアノアクリレートにより脱毛し,その直後にOVAまたはOVA酸化チタンを塗擦した。2週おきに3回適用したが,ほとんど抗体価の上昇は見られなかった。この原因としては大きく分けて2点考えられる。1つは,皮膚内への送達量が少なくいこと,もう1つは,酸化チタンのアジュバント能が強くないため感作が成立しにくいことがあげられる。今回の適用は水性の基剤としたため,皮膚との界面張力が大きく,毛包内への浸透に不利だった可能性があり,今後さらに基剤との組み合わせを考慮する必要がある。また,コレラ毒素のようなアジュバントを併用し感作性を高めることも必要であると考える。
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