研究課題/領域番号 |
24590213
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
黄倉 崇 帝京大学, 薬学部, 准教授 (80326123)
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研究分担者 |
出口 芳春 帝京大学, 薬学部, 教授 (40254255)
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キーワード | blood-brain barrier / organic cation / carnitne / OCTN2 / siRNA / opioid / transporter |
研究概要 |
ヒト血液脳関門モデル細胞としてヒト脳毛細血管内皮細胞株(hCMEC/D3細胞)を用い、モルヒネの構造類似体であるトラマドールおよびアポモルヒネの輸送特性を解析した。その結果、トラマドールおよびアポモルヒネはオキシコドンと同様にプロトン/有機カチオン交換輸送体によって効率的に輸送されることが示され、高い輸送クリアランスを持つことが示された。アポモルヒネは構造異性体が存在し、R体はS体に比べラットの脳/血液遊離型濃度比が高いことが報告されているが、R体とS体でhCMEC/D3細胞の取り込み輸送に差はなかった。アポモルヒネのエナンチオマー間で血液から脳への輸送は差がないことが示唆され、脳からの排出輸送の違いがS体と比べR体の脳内濃度が高くなる可能性が考えられた。 hCMEC/D3細胞を用いたsiRNA実験の有用性について、OCTN2/SLC22A5のカルニチントランスポーターとしての機能を解析した。リポフェクション法によりhCMEC/D3細胞への高いsiRNA導入効率が得られ、OCTN2 siRNA処理により、カルニチン輸送の顕著な低下が観察された。hCMEC/D3細胞におけるカルニチン輸送特性と遺伝子発現解析の結果と合わせ、OCTN2/SLC22A5がヒト血液脳関門におけるカルニチン輸送の主要分子であることが示された。またhCMEC/D3細胞におけるRNA干渉法は、ヒト血液脳関門におけるカチオントランスポーターの機能解析に有用な方法であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの血液脳関門モデル細胞を用いて、麻薬性鎮痛薬オキシコドンの脳移行を担うプロトン/有機カチオン交換輸送体の機能を解析することにより、モルヒネの構造類似体であるトラマドールやアポモルヒネがその基質となることが明らかとなり、アポモルヒネのエナンチオマー解析から、この輸送系は構造異性体を区別しない可能性が示唆された。 さらにプロトン/有機カチオン交換輸送体の分子同定に関して、ヒト血液脳関門細胞におけるカチオントランスポーターの機能をRNA干渉法で評価する系を構築することができ、RNA干渉法により候補分子をスクリーニング出来ることが示された。 以上の点から、現時点において本研究課題はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
アポモルヒネのエナンチオマー間での脳/血液遊離型濃度比の違いについて明らかにするため、アポモルヒネのR体とS体で血液から脳への取り込み輸送および脳から血液への排出輸送をインビボで比較する。アポモルヒネの放射標識体は入手困難なので、non-RIでのインビボ血液脳関門輸送実験系を構築する。血液脳関門非透過性の蛍光標識体を標準物質として用いてin situ脳灌流法およびbrain efflux index法を行うことにより、アポモルヒネの血液から脳への取り込みクリアランスおよび脳から血液への排出クリアランスを評価し、エナンチオマー間で比較する。 本研究で最適化したsiRNAによる遺伝子発現抑制実験条件を用い、外因性カチオン輸送体、内因性カチオン輸送体、プロトン交換輸送輸送体である約40種のSLCトランスポーターがプロトン/有機カチオン交換輸送体の分子実体となり得るかをスクリーニングする。
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